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一考 | 提灯

 私は仮性包茎である。仮性包茎を提灯まらともいう。提灯は老人のしなびた陰茎を指すが、仮性包茎のそれをも意味する、こころは伸びたり縮んだりである。なるほど、私の場合は双方を兼ね備えているのだから、真性提灯ということになろうか。
 仮性包茎であることを知らないうちは銭湯にも通っていた。そして十代半ばに筆下ろしをしてからはそう気軽に銭湯へ行けなくなった。女性につままれて「可愛いわねえ」とひやかされるにはよいのだが、銭湯で倶利迦羅紋紋のおじさんから「まだ子供か」と言われるのが小癪に障ったからである。大人にはない子供ならではの羞恥であり、達引きであった。
 福原の桜筋に大映トルコというのがあって、その一部に家族風呂が設けられていた。はなしは前後するが、昭和三十三年に売防法が成立してから、女郎屋は浮世風呂に職種転換した。登録は昔ながらに旅館であって、お女郎衆はにわか湯女となり泡姫となった。一六〇〇年代半ばに三都で湯女取締りの触があって、一六六八年には江戸の風呂屋七十四軒を潰し、湯女五百十二人が吉原遊郭へ移されている。ほぼ三百年後にその逆の事態がもたらされたのである。
 その浮世風呂のなかでトルコ風呂(特殊浴場の名前としては終戦直後から使われてい、大阪には昭和二十六年にすでに在った)を名告っていたのが大映トルコと同じ桜筋にあった神戸トルコである。理由は知らないが、浮世風呂に家族風呂の併設はなく、それはトルコ風呂のさらには福原だけの特質であった。
 泡姫のサービスがなく、風呂の設備をのみ提供するのが家族風呂であり、いわば個室版銭湯である。家族風呂と称していたが、客は家族とは限らない。水商売のアベックが利用者の大半を占めていた。同衾だけが目的なら湯を張っているあいだに済ませることもできる。私もそのような利用をなんどか経験している。もっとも、浮世風呂を家族風呂がわりに使ったり、複数の泡姫を連れて家族風呂へ赴いたこともある。同じ町内会であればこそ許された無礼であった。



投稿者: 一考    日時: 2006年12月14日 19:35 | 固定ページリンク





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