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一考 | コバルトブルー

 三年ほど前に積丹半島出岬町、島武意の海の色の青さについて当掲示板で書いた。その宝石のような色について深く書かなかったのにはわけがあった。じつはすぐ横の美国港からビヤノ岬を周遊するグラスボートが出てい、私はそれに乗船したのである。
 底の岩が真っ白に続き、海藻は何も無い、点在する黒い点はすべてキタムラサキウニ。石の表面が白くなっているのは無節サンゴモに被われているからであって、要は一面の磯焼け。目の当たりにした積丹の海は死の海だったのである。
 「磯焼け」とは通常は海藻類が生えている岩礁地帯からコンブなど有用海藻はもちろん、ほとんどの海藻類が無くなり、岩礁表面が石灰藻に覆われた状態をいう。当然、コンブを主食とするキタムラサキウニに身は入らず、アワビなどの生産も著しく減少する。北海道では日本海南西部沿岸の後志南部や檜山沿岸に多くみられたが、最近は道北でも見られるようになった。別の折に下北半島の仏ヶ浦の惨状を書きましたが、どうやら磯焼けは確実に北上しているようである。
 「あの時に見た海の色の青さとひそやかな野辺の送り」と著せば恰好はよいのですが、その実体は海の荒廃にあるのです。積丹の海の青さと石垣島の海の青さはよく似ています。珊瑚の白と磯焼けの白とが海を同じようなコバルトブルーに変化させるのです。同じ群青とはいえ、石垣島のそれには興味がなく、私が積丹に惹かれる最大の理由はその海が漂わせる死の匂いにあるのです。
 中標津町の開陽台の売りは「地球がまるいことが実感できる」、標茶町の多和平の売りは「今にも落ちてきそうなほどの星が、満天に広がる」。共にライダーなら必ず訪れるところだが、牧場はゴルフ場同様、保水能力はまったくない。ちょっとした雨でいたるところが川となり、地面をえぐって滝となる。台風が上陸すれば、河川の氾濫、土砂崩れが方々で起こり、道路は流され、水田や畑は泥に埋り、流木が家屋をなぎ倒していく。満天の星空にはなんの罪もないが、牧場はひどく環境を破壊している。反論を喰らうのを承知で言いたいのだが、それら根釧台地から積丹の海に至るまで、自然はひとの悪意を飽食してきたのだと思う。いまにそこら中が悪意だらけになって、死の匂いが充満し、日本全土が崩壊する日がくるのを一日千秋の思いで待っている。



投稿者: 一考    日時: 2005年06月09日 03:32 | 固定ページリンク





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