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高遠弘美 | 窪田般彌『一切合財みな煙』

一考さんへ。
すでにご存じと思いますが、松井須磨子が歌つた『カルメン』の主題歌(北原白秋作歌)を書名にした窪田般彌のエッセイ集『一切合財みな煙』(河出書房新社)は最近の本の中では群を抜いて素晴らしいものでした。巻末で窪田先生(遠くからあくがれ眺めてゐた学生時代の思ひがどうしても抜けず、とても「さん」附けや姓だけの呼び捨てはできません)が引いて居られるレニェの詩の一節、
 Le vrai sage est celui qui fonde sur le sable, sachant que tout est vain qui n'est pas eternelの「まことの賢人」といふのはまさにこのやうな文章を書くことの出来るひとを言ふのであらうと思ふことしきりです。これを本にした河出書房の編集者の見識もみごとといふほかありません。それだけに、一考さんから伺つたうつしみの先生の現在の状態を思ふとき、胸ふたぎ物が言へなくなります。最初に詩集のことを書かなかつたのはそのゆゑでした。
「うつしよに旅人のかすかな息づかいを遺したい、かりそめの華を咲かせたいとの文学への思慕を大事に育もうではありませんか」とのお言葉、ふかく心に刻み、私もまた、のろくまた鈍き歩みながら、よちよちと進むことにいたします。

私を理解してくださる一考さんをはじめ、私に「果敢にチャレンジ」して下さる編集者の方と出会へたのも「うつしよの」よろこびです。そのよろこびの大きさについては改めて書かずとも判つて頂けるものと思ひます。
年の暮れ、といふだけでせはしさが増しますが、風邪など召したまふなかれ。



投稿者: 高遠弘美    日時: 2002年12月21日 08:09 | 固定ページリンク





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