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一考 | ご返杯

 高遠さんへ
 挙式、披露宴プランならぬ葬儀プランについて一言。
 父の死去に伴う火葬のおり、三種のランクがあることを識りました。小一時間に及ぶ火葬の鉄の扉のまえに設ける祭壇の華麗さによって価が異なるのだそうですが、それを知ったのは父が真っ白な骨に変身したあとのこと。当初、私はてっきり焼き方にランクがあるのだと思い込んでしまいました。すなわちレア、ミディアム、ウエルダンの三種です。父のことだから生焼きでもよろしかろうと、もっとも安いコースを指定したのですが・・・
 前日から、御儀式、お控へ室、通夜会場費、お料理、お飲物、献花、霊柩車、そしてお寺さんへのお布施にはじまって、戒名、自宅に設える祭壇から永代供養の費用まで、二百万ほどの金数が瞬く間に飛び散らう始末。それも決まって「一般的にはもうひとつ上のランクを皆様は選ばれます」とのご託宣を携えて、営業マンは喪主の私を通り越して母親に取り付いて離れないのです。かかる当惑の果てに火葬と骨壺の選択がやって来ました。
「売るのは媚、買うのは顰蹙」とは畏友、永瀬由利子さんが私をさしての名言ですが、かの葬儀の日、遺体の焼きはレアで結構ですと参列者の前で述べ立てた私のデスペレートな識見を彼女は見通していたのですかねえ。



投稿者: 一考    日時: 2002年08月02日 23:56 | 固定ページリンク





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