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一考 | アブサン

 奥歯さんが4000万リラ(邦金換算4000円)で買って来られた土耳古土産のラク(YENI RAKI)は一種のフレンチ・パスティスでした。そこで猫ではなく酒のアブサンについて一言。
 フランス人医師ピエール・オルディネールが1792年にアブサンのレシピを創り、1797年にペルノ社(現在のペルノ・リカール社)の創業者アンリ・ルイス・ペルノが引き継ぎ、彼はスイスのネウチャテル州クーヴェ村に蒸留所を創立しました。しかし、20世紀初頭に西ヨーロッパでの生産が禁じられ、以降は東ヨーロッパで細々と造られてきました。
 穀類主体の原料アルコールにニガヨモギ(アルテミシア・アブシンシューム)を浸しアブサン特有の香味をつけます。次いでペパーミント、クローヴ、シナモン、パセリ、コリアンダー、バジル等、17種類の薬草類を5日から10日ほど浸漬、エキスを十分に抽出させます。さらに香味成分として少量のアニスとミントを加え、味わいをまろやかにするためごく少量の糖分を加えます。
 アニス系の強烈な芳香と強いアルコールのハーヴ系リキュールですが、モネ、ドガ、ピカソ、ゴッホ、またはボードレール、ランボー、ヴェルレーヌなどが耽溺した中毒性の高い酒として識られています。ニガヨモギに含まれるツヨン(Thujone)が中毒作用すなわち習慣性を生じさせる元凶です。
 1906年にはスイスで、1915年にはフランスでアブサンの生産が全面禁止されましたが、1981年にWHOによってツヨンの規制値が見直され、10PPM以下なら生産可能となりました。そのEC基準に則って86年ぶりにフランスでの製造が再開され、昨年12月中旬にトレーネ(60度)の商品名で日本へも輸入されました。
 同時期に輸入された「ABSENTE」表示のフランス産リキュールは、私達が普段口にするペルノやリカールなどフレンチ・パスティス同様、「Substitute of Absinthe」つまり「アブサンの代替品」と呼ばれている商品であってアブサンではありません。味わいは甘く、その名の由来であるアルテミシア・アブシンシュームやツヨンなどは含まれず、アメリカなどのアブサン禁止国へ輸出する目的で特別に造られた商品です。また、アブサンはエメラルド・グリーンと呼ばれる魅惑的な薄い緑色をしています。主原料のニガヨモギ、バニラ、各種スパイス、紅茶類、天然香料等の成分がアルコールに溶け込み、混じりあう行程での発色です。一方、フレンチ・パスティスも水を加えれば半濁しますが、酒そのものは無色透明のものが多いようです。ラクもパスティスの一種ですからアブサンほどの強烈な癖やアクはないのですが、ペルノと比してすこぶる上品な香味に仕上がっています。アブサンにこだわらなければ、素敵なトルコの地酒です。
 フランスに次いで、ブルガリアでも2001年末にハプスブルグの名で1792年のオリジナル・レシピによる復刻が販売されました。こちらは加水しても濁りませんのでアブサン・カクテルに向いています。グリーン72.5度(8.3PPM)とレッド85度(8.4PPM)の二種があり、トレーネより美味ですが、やや値が張ります。
 それにしても、昭和33年から40年頃にごく少量輸入されていたアブサンはどこの国で密造されていたのですかねえ。ご存じの方がいらっしゃれば教えていただけませんでしょうか。



投稿者: 一考    日時: 2002年07月08日 04:26 | 固定ページリンク





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