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川上さんへ
『恋する肉体koisuru karada』の飛鳥新社からの上梓、おめでとう御座います。
ちょっと難産のようでしたが、処女歌集に相応しい品のある本になりました。表紙に用いられた貴女の裸体写真も素敵に収まりました。歌人としての技術云々は申しません。腰巻にも著されていますように、貴女の奔放で無垢な感性が短歌の形を借りただけと私は思っています。まだ一年足らずのお付き合いですが、性愛に対する貴女の照射角度のユニークさには舌を巻いております。当掲示板の方々にも購入をお薦めしたいので十首ほど引用させて頂きます。
つい先刻(さっき)逢ったばかりの男性(ひと)の手を握りしめてる
堕ちないように
眼を閉じて舌を絡めてふと気付くあなたの顔が思い出せない
そそくさと離れて事後の処理をするどの男性(ひと)の背も同じ表情
左手の指枷(リング)窓から放り出し最早誰にも飼われまいとす
肉の芽に性具を押し当てて果つる・強制終了・の夜
クシャクシャに丸めて欲しい掌(て)の中でどんな形も思いのままに
・好きだよ・と云って気持ちは無くていい刹那の我が溢れ出すまで
道端にツバ吐くような射精して「ごちそうさま」のある筈もなし
してもいぬ目隠し気付けば外されて少女の我を殺せしアナタ
禽獣の咽喉(のど)にタオルを詰め込んで突き殺すまで壁薄き檻
初めて原稿を読ませて頂いた折の印象は仏蘭西のすぐれた心理小説、恋愛小説に触れた時のそれと共通するものが御座いました。貴女のなかには間違いなく男女を超えた表現者としての眼差しが息づいています。あまりにも素直、あまりにも実直な貴女と表現者としての貴女の意思、そのあわいをこれからいかように埋めていかれるのか。貴女と共に同時代を生きるという愉しみをお与え下さったことに感謝致しております。必ずや、次回は短編小説を試みられるよう願い上げます。
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