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動坂亭 | とりとめもなく

講談社文庫の新刊『十二宮12幻想』の東雅夫氏による解説は、アンソロジーと競作集の違いについて熱く持論を語ったもので、それを読んだ小生がゆくりなくも連想したのは、他ならぬ『種村季弘の箱』でした。
 東氏の論に沿って譬えるなら、『箱』はアンソロジーと競作集の両面の性格を持っていて、その競作集とならざるを得ない部分に、”伝説の名編集者”(『SFマガジン』最新号)渡辺一考氏のbk1での総括における葛藤があるのかな、と(ちなみに、アンソロジー部分の代表格は吉行淳之介「「幻に化す料理」集成」で、やはり、さすがに違いますね)。
 『十二宮12幻想』は、そもそもコンセプトが抜群に優れていて、各編の出来不出来からは独立して称揚されるに足ります。『箱』もまた、企画と内容とを別個に捉えることができ、初めての特集本という意義は出版史に残るものでしょう。
 内容については、bk1で触れていらした各氏の文章はもちろん、他にも秋山裕徳太子、池田香代子、石井満隆、石内都、大内順、大久保鷹、坂入尚文、谷川渥、田野倉稔各氏のエッセイや談話は、興味深いものがあると思います。ご本人へのインタビューでの「無邪気に生きているつもりでも、家族構成やなんやら、既に決定されてしまっている歪みをもろに蒙っているんですね。それが非常に嫌だということでしょう」という言葉なども、実感として身に沁みます。
 対談で示唆されているように、例えば『書物漫遊記』を書評や作家論としてでなく「小説」として各編ごとに具体的に読み解く試みなどが、将来もっともっとなされてほしいものです。ほんとに。
 一日一度は覗く「ですぺら掲示板」や「我楽多本舗」でも、誰か種村氏について書いてくれないかなーと、勝手に期待しています。
 ところで文庫版『12幻想』、当初様子見だったのが、「エロチシズム」はレアカバー(いまなら書店にまだまだある)、「十二宮」は東氏の解説につられ、3冊揃えるしかなくなってしまいました。やれやれ。



投稿者: 動坂亭    日時: 2002年05月18日 13:38 | 固定ページリンク





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