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外山恒一 | 裁判総括

今回は、フザけないで、ちゃんとぼくの心境を書き残しておこうと思う。
 高等裁判所の判決は「控訴棄却」、判決理由は、ほとんど第一審判決のまんまコピーで、
裁判所がいかに手抜き仕事をやっているか、3審制なんてものがいかに機能していないかと
いうことだけがハッキリする代物だった。
 一応、身辺整理のための時間稼ぎをしたいので最高裁への上告手続きをおこなっていると
ころだが、上告が受理される可能性は1%もないだろう。
 欧米なら、百%、無罪判決が出ている裁判である。
 日本という国がいかに先進国でも法治国家でもないかということが、身に染みて分かった。
 ともあれこれで、ぼくの10ケ月の刑務所行きは、ほぼ確実となった。
 弁護士の話では、入獄はおそらく5月か6月だろうという。
 悪あがきしても仕方がない。個人の力ではどうにもならないことだ。
 黙って10ケ月の刑務所生活に甘んじる他ない。

 政治的な表現をあえてすれば、ぼくの問題意識は極めて明確だ。
 セクハラ問題あたりから予兆があって、近年のストーカー規制法、DV防止法など、誰も
正面切って反論できないような大義名分で、国家権力の及ぶ領域が市民社会のすみずみにまで
拡大していく状況にぼくは反対だということだ。
 しかも、国家権力の肥大化に本来なら歯止めをかけるべき左翼勢力が、むしろフェミニズムの
猛威に萎縮して、それを事実上、後押しさえしているという様は言語道断と云うべきだ。
 ぼくは、そうした極めて現代的な最先端の問題に、真正面から闘いを挑んだ。
 現実に起きたのは、単なるちょっと行き過ぎた痴話喧嘩である。
 本来なら、他人がとやかく口を出すべき性格のものではない。
 しかし、いったんそれが立件、起訴、裁判にまで発展している状況、そして当事者の一方が、
刑務所送りになるかもしれないという事態にまで公的、政治的な問題にまで進行しているという
のに、ぼくがこれまで「同志」だと固く信じていた人たちさえもが、宮沢を唯一の例外として、
直視を恐れ、沈黙を貫いた。

 「メンズリブ」の運動には、心底から幻滅した。
 こんな時にこそ、彼らは男の側に立って、ぼくの起こした事件への評価は各々の活動家によって
差異はあるにせよ、女を殴ってしまった男の追い詰められた精神状態を理解することに努め、
少なくとも裁判という公の場では、ぼくを擁護する側に回るべきではなかったのか?
 善し悪しはともかく、「メンズリブ」発祥の地、アメリカでは、反フェミニズムの、場合によって
はマッチョ主義のグループすら存在するという。
 しかし、日本の「メンズリブ」は、フェミニズムの横暴に完全に屈服した、女の奴隷共の集団ではないか。
 「男性解放」なんて口先だけの方便で、現実には、怖いフェミニスト様の茶坊主に成り下がっている
だけではないか。
 かといって「右」に転向できないぼくとしては、結局、宮沢を除いては現在、共に闘える「同志」は
存在しないんだということを思い知った。
 つまり、いわゆるこれまで式の「運動」路線では、ぼくに活路はないということだ。
 もちろんぼくは懲りることなく運動を続けるが、それははた目には「運動」の体を成さない、
異様なものとなるだろう。
 そのシナリオは、すでにぼくの頭の中にある。



投稿者: 外山恒一    日時: 2002年04月26日 16:39 | 固定ページリンク





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