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かつて「大井武蔵野館評論家」と異名を取った御邪魔ビンラディンの主観に基づいて、今度のラピュタ阿佐ヶ谷の円谷英二特集について、簡単なコメントを加えましょう。これは、わざわざつまらない作品を見るために阿佐ヶ谷くんだりまで出かけて、帰りはヤケ酒を飲んで「アサガヤリ」なんてならないようにという御節介から来るものであります。
まず、15日からの「電送人間」「獣人雪男」「透明人間」は、それぞれに見ごたえがありますが、作品自体の面白さでは「獣人雪男」がやや劣っている模様です。「獣人雪男」や石井輝男の「恐怖奇形人間」がヴィデオ化されないのは、おそらく(売行見込<トラブル処理経費見込)という不等式によるものですが、それならなぜ、曲谷守平の究極のゲテモノ映画「九十九本目の生娘」(新東宝1959)がヴィデオ化できたのだろうか、と不思議に思わない人は少なくないでしょう。(いまは廃盤)……と、25作品全部に対してこんな具合にやっていると、こっちはともかく、読む方が疲れてしまうから、お勧め作とそうでないものとを挙げるにとどめましょう。
まず、特撮を期待して行くと損するのは、意外や稲垣浩監督の三本。「ゲンと不動明王」は、今の目で見ると、三船敏郎が不動明王の格好をしてラスト近くで踊るのだけが見ものというトンデモ映画ですし、「日本誕生」も「大坂城物語」も、ウェルメイドな「娯楽大作」ながら、いまひとつの面白みに欠けている。戦前の巨匠稲垣浩がこの程度であるからして、当時の黒澤明が、同時代的に見ていかに抜きん出た監督だったかというのが、逆説的に納得できますね。
今回の特集の作品としてのベスト5は「ゴジラ」、「空の大怪獣ラドン」、「地球防衛軍」、「モスラ」、「海底軍艦」。それにキングコングもの2作とフランケンシュタインもの2作がつづくといったところでしょうか。
意外な隠し玉が佐伯幸三監督の「極楽島物語」で、川島雄三の「グラマ島の誘惑」と似た雰囲気だなと思ったら、撮影が岡崎宏三で、脚本が長瀬喜伴ではないか! プリントの状態がよければ、最後の噴火シーンだけでも、もう一度見てみたい。
それはそれとして、ラピュタ阿佐ヶ谷の今回の特集チラシで困るのは、「孫悟空」が戦前のエノケン版か、戦後に同じ山本嘉次郎がリメイクしたのり平版かがまったく分からないことです。製作年が「1959(S15)」とあって、キャスト、スタッフ等が全部リメイク版の陣容なのですね。こいつは、「あーのネ、オッサン、わしゃかなわんヨー」だ。
昨年、「小林信彦が選ぶ100本の日本映画」というのをここで特集したときの中川信夫監督「エノケンの頑張り戦術」のプリントは、はたして「防弾チョッキの人体実験」のギャグが入った完全版だったのかどうか(昔見た完全版を再見しようと思って、ニュープリントと称するやつを見に行って、まったく別の映画館でこのギャグのカットされた短縮版を2回見た!)、どうも細かいところばかりが気になる御邪魔ビンラディンなので、あった。
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