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一考 | 宇野邦一さんのことなど

 ムーンさんへ、妖しき三種の神器、かたじけなくも落手。
 Adobeのお姉ちゃんの逆鱗に触れぬよう、注意致しましょう。先日の松友さんの来信も詩的に装われていましたが、草の根ネットとは異なり、こういうオフィシャルの場では迂闊な文言や矯激な発言には要注意ですね。活字や手紙の方が、ヨタをとばせそうな気がしてきました。昔からですが、どうもレトリックなるものは苦手です。
 貴方のh・pはいかが相成りましたか。須永さんのh・pでは会員制のサロンでも拵えて、毒舌に浸ろうかと思っています。昨今、著者の息遣いが聞こえる書冊は珍しくなりました。今こそ必要なのは「署名のない紙つぶて」なのにと案じる次第。
 ところで、宇野邦一さんの「ドゥルーズ流動の哲学」は読まれましたか、講談社選書メチエの一冊として上梓されました。定価は1700円。取るに足らぬ現代文学(特に小説はひどい)の中にあって、ひときわ屹立した著書とかたく信じます。ご本人とのお付き合いは間合いの取り方がうまくいかず、些か難渋致しておりますが、宇野さんの拵え事にはかねてより畏敬の念を抱いております。書肆山田から上梓されたベケットの翻訳は箇々の作品に合わせて異なる文体を取り入れ、原著者の呼吸もしくは搏動に迫ろうとした意欲に溢れた逸品。気配りと芸の細やかさ、言語に対する智力が美事に三位一体をなしています。ヘーゲルを要約させて右に並ぶ者なく、恩師にあたるドゥルーズの肖像を、哲学的生涯をときほぐした著書の到来が待たれていました。もとより、わが邦における一過性の構造主義に私はなんの興味も抱きませんが、個としてのドゥルーズの哲学には大いなる興味を抱いて参りました。宇野さんの文章は行きつ戻りつ、何を読みとり、いかに読み換えるか、難解なドゥルーズのモチーフにまとわりつつ、懐疑を日本語の中にいかように織り込んでいくかに終始します。ドゥルーズに限らず、立ち徘徊ることを本意とする宇野さんの哲学が、肉声が実に簡明かつ鮮明に書き綴られています。稀にみる名著にして、お薦めの一本です。



投稿者: 一考    日時: 2001年10月26日 14:57 | 固定ページリンク





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