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津原泰水 | ボタン海老


一考様 薫子様
 たいへんお世話になっております。
 お聞きおよびかとも思いますが、某日打合せの席にて一考さんが
気をきかせてくだすったボタン海老、とりわけかしら焼き、金子画伯は
心からお気に召したようで、翌日早速ボタン海老探しに出掛けられた
ほどとか。美術倶楽部ひぐらしでの個展初日、その深夜にもボタン
ボタンと懐かしまれていました。
 それほど美味かった、私にも美味かった、という御報告のみのつもり
でしたが、ふと、金子國義という画家の本質にふれたような気すらした
むねも、追伸いたします。
 氏、たとえばヴィスコンティのような気に入った映画監督の作品は、
全場面を自演できるほど繰り返し御覧になっている。本なら鏡花。
暗唱できるほど読みこまれ、他は要らんとまで仰る。あるいは
ですぺらで『桜姫東文章』の終幕を再現されていたのは、むろん
一考さんも御記憶でしょう。
 一度旨いと思ったものは食い尽くす、翌日も食うし、思い出しては
また食い、ひたすら本質を見極めんとする。きっと、それを美味いと
思った己との対峙です。それが一生続く。金子様式が出来上がる。
 情報ラーメンで日々満腹している我身を恥じいる一方、氏の
ストイシズムにはゴッホが「牡牛のごとく邁進する」と評した
ゴーギャンを、ははあと思い重ねた次第です。
 海老の、頭の、串焼きは象徴的とさえ云えるほど「金子ごのみ」の
一品だったようです。



投稿者: 津原泰水    日時: 2006年05月06日 20:51 | 固定ページリンク





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