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知床に限らないが、船から与えるエビセンをねらってカモメやウミネコがあとを追う。カモメは鈍くさいので、海に取りこぼしたエビセンを拾って食べている。一方、ウミネコは指先のエビセンを見事な所作で啄ばんでいく。船客は嬌声をあげて喜び、それを見通して船着き場ではエビセンが大量に売られている。いつに変わらぬ見慣れた風景なのだが問題がある。カモメは雑食性だが、ウミネコは海面の魚等を主食にしているので「炭水化物」を消化できない。捕食しても吐き出すしかなく、食べ過ぎたウミネコは死ぬ。親からもらったヒナは吐き出せないので、大半が死んでしまう。
繰り返すが、強風のなか、高くつきだされた指の先から餌をかすめとる至上の芸のあとに死が待っている。言い換えれば、得意の絶頂と死が手に手を取ってやってくるのである。他方、ウミネコが死ぬのを承知で餌を与えているとしたら、ひととは見上げた悪意の持ち主である。当然だが、ひとつの国の、ひとつの地域の生態系が狂おうが、種が滅びようが私の知ったことではない。それでなくとも、生あるものはすべて亡びるべしと思っている。
今日、はやがけにY・Nさんがいらしたと薫子さんから聞く。深沢さんが亡くなられてから、お会いしたいと思っていたのに残念である。掲示板をお読みなので、書いておきたいのだが、久しぶりにゆっくり酒を酌み交わしたいと願っている。紋別、知床、根室、釧路、函館と、たとえどのようなお店であっても、あなたと一緒ならお店中がきらきら輝くのである。エビセンを飽食したウミネコが死ぬのであれば、ひとが悪意を捕食しすぎるとどうなるのか。ひょっとして、輝きのあとに死が約束されているとしたら、そんな恐怖の予感がにんまりと漂うようなY・Nさんではなかったか。このところ世の中への呪詛を肴に酒を飲む機会がめっきり減っってしまった。されば死ぬ前に一度だけ、ホテル地の果てへイバラ蟹の内子の生を食しに行こうと思っている。
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