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一考 | あいにくと今日は満月

 外山時男さんへ
 蕎麦味噌の次にマーマイトとはおそれ入りました。外山さん一流のブリテッシュにかけての知的ユーモアかどうかは判じかねますが、あなたとならぶっ飛んだ会話が楽しめそうですね。もっとも、マーマイトは味噌というよりは糠味噌に近い香味、いっそ糠床に用いて牛たんか豆腐でも漬け込みますか。おっと、貴店には味噌漬け豆腐がちゃんと鎮座しておられるご様子。
 西明石で好評だったものに合鴨のケチャップ煮と葱の牛肉味噌炒めがございました。ケチャップ煮はケチャップ、トマトピューレー、チャツネ、赤ワイン、濃口醤油、塩、胡椒、白出汁にて煮込んだもの。牛肉味噌炒めは溶き卵1個、酒2、塩胡椒、片栗粉5、サラダ油2に漬け込んだ細切り肉を油で揚げ、フライパンで酒1、砂糖3、赤味噌1、濃口醤油1と絡めます。それを大量のさらし葱すなわち白髪葱で挟むように盛る、という芸のない小鉢ですが、葱の辛みと絡めソースの甘みとのコントラストが受け入れられました。それと赤せんまいの煮込み、ただし煮込みとは申せ、こちらはデミグラスソースを用いて洋風に仕立てます。当然、トマト、ブイヨン、ワイン、微量の味噌の香味を生かすので、女性に人気でした。
 日曜に合鴨、月曜にさらし葱、火曜に日持ちのする煮込み、水曜はお互いさまにて、木曜は納得、かてて加えて金曜に「大半の蕎麦屋が煙草と子供は大嫌い」。ここまでは蕎麦屋の定番でまだ我慢できるのですが、外山さんのおっしゃる「求道者」はさしずめ土曜。こいつが私には許せないのです。
 「蕎麦道」なる御託宣が壁一面に張り出された店が池袋にございました。「蕎麦は思想であり哲学であり精神そのものである、心して食されよ」というようなことが書かれていたのです。師の教えに従順なだけなのか、蕎麦の啓蒙に励んでおられるのかはともかく、蕎麦にまで権威が必要かと悲しい思いをさせられました。
 私が知る板前はレシピを常にオープンにしています。同じものが作れるなら作ってみろ、もしくは追いつかれた時には次の領域に達しているよ、との心意気だと思われます。それと比して焼き鳥屋、鰻屋、お好み焼き屋、饂飩屋、蕎麦屋などにはもったいぶって教えない方が多く見受けられます。秘密めかすことが権威付けになるとでも思っていらっしゃるようです。いずれにせよ、茶道、華道、柔道、空手道など、「道」がつくものほど賤しく、いかがわしいものはないのですが。
 「三日月」さんは酒飲みオーケー、スモーカーオーケーとやら、嬉しくなりました。閑古鳥相手に愚痴をこぼしつつ、蕎麦をついばめればこれにまさる喜びはなく、近くお会いできる日を愉しみにしております。



投稿者: 一考    日時: 2003年12月08日 04:23 | 固定ページリンク





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