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高遠弘美 | 悪口です

前項に続きますが、お許し下さい。

本日は悪口を申します。悪口のお嫌いな方はここでおやめ下さい。

次のいくつかの文をご覧下さい。

まず、数字の表記から。「二〇年前」「九二〇億ドル」「イスラエルの三四年にもわたる非合法な軍事占領」「八月二十七日」「一〇〇人」「二〇〇人」「五〇〇人」「三〇〇〇人」「七〇〇万」「一万九千人」「四九パーセント」「六、〇四五戸」「三二、七五〇戸」「二二〇ヵ所」「十九世紀」……。
いかがでしょう。私はこういう数字表記の不統一が人一倍気になるほうなのかもしれませんが、読んでいていささか引っかかりました(私なら「二十年前」「三十四年」「二百二十ヵ所」「六千四十五戸」のように書きますが、それはともかく、不統一が気になります)。
それからこんな一節。
「しかしながら、もっと気が滅入るのは、世界の中でのアメリカの役割を理解するために費やされた時間があまりに少ない」。
あるいはまた、
「(略)が、プロパガンダの目的である。また、イスラエルがいままでどおり弾圧を続けつつ、同時に犠牲者であるように見せかけることなのだ」。
また、
「前述のように、アメリカの政治的・文化的シーンに働きかけようとする計画と思考がまったく欠如していたことが(といってもそればかりでもないのだが)、一九四八年以来驚くべき規模に達するアラブ人の土地と生命が(アメリカの援助を受けた)イスラエルによって奪われたことについて大いに責められるべきなのである」。
あるいは、
「そして、こうしたキャンペーンをひじょうに効果的にしてきたものは、西欧がもっている自分たちの反ユダヤ主義に対する積年の罪悪感なのだ」。

みすず書房の新刊サイード著『戦争とプロパガンダ』からの引用です。
内容は素晴らしい。読まれて然るべき本だと思います。それなのに、この文章は何でしょうか。
こちらの理解力の乏しさのせいかもしれませんが、何を言っているのかよくわかりません。惜しい、残念、癪に障る、というのが率直な感想です。
ふだんこういう非難めいたことは書かない主義ですが、原著が素晴らしいだけに、大手がこういう翻訳を平然と出してしまうことに無性に腹が立ち、書きました。妄言多謝。

もうひとつつけ加えます。最後にサイードのインタビューが載っているのですが、そこでの「ぼく」「ぼくたち」はどうでしょうか。
「ぼくの知っているアラブ人やムスリムはみんな合衆国にものすごく興味をもっています」。
。一九三五年生まれ。六十六歳。私生活ならともかく、公のインタビューでこんな言い方をするでしょうか。

洋書屋はこの本の原本を早急にそろえた方がいいのでは。翻訳を買ったひとの大半が途中で匙を投げるから。



投稿者: 高遠弘美    日時: 2002年03月01日 01:23 | 固定ページリンク





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