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一考 | 茶利放談

 本日、種村季弘さんの特集号のゲラがすべて上がって来ました。4月1日の発売日を前に、漸っとそれらしい体裁になりました。川島さんに感謝しなければなりません。それにしても校正には自信がないのですよ、困ったものです。
 タイトルの「怪人タネラムネラ」は高橋睦郎さんの頌から掻っ払いました。高橋さんがわざわざご来店、事前に種村さんと私の茶利なる放談のゲラを読まれるとのこと。矢野目源一の訳詩の順序が間違っているとのありがたい御指摘を受けました。初稿とはいい条、私の記憶の出鱈目を早々に指摘され、恥じ入るばかりで御座いました。
 唯一ちゃらんぽらんが売りの私にとって、種村さんと対談する気など最初から毛頭御座いませんでした。相手の土俵に上がらずに約束を果たす。そのために私が講じた策は種村さんを酒席におびき寄せることでした。編輯の打ち合わせとの名目で酒を持参して押し掛ける、酔っ払わせての放談からなんとか稿をでっち上げる、それが私の最初からの思惑だったのです。
 正面切っての文学的対談なら青土社からもっか刊行中です。従って、種村さんのお気に召さないかもしれないが、読者にとってより楽しく読める内容、即ち素顔の種村さんが少しでも表出されているもの、肉声をうかがえるもの、と心掛けたのです。
 以上、サービス精神旺盛な元編集者の無責任な言い逃れです。

 絢爛豪華な目次すなわち執筆陣を視て思い遣るに、柿沼さんと言うよりは、本誌の責任編集者は種村季弘その人ではなかったかと。正確に申せば、仕置き人種村季弘、口入れ屋渡辺一考、その有様を丹念にフィルムに撮っていった監督が柿沼さん、されば梅子は照明か音入れ屋といったところ。主演者の仕置き人と監督との間のディスカッションにてすべての書割と舞台衣装はしつらえられ、例によって私めは徒に飲み惚けていただけ。とこんなことを申せば原稿用紙と格闘なすった諸先生方から叱られましょうか。
 種村さん主演の映画の撮影と別冊幻想文学の編輯とがですぺらにて同時進行、種村さんの名演技に小生の腹の皮はいまなお捩れたまま。その捩れがかかる後日談を著したくなった所為なのです。いずれにせよ、何の苦労もなく、かかる雑誌の編輯が終了するとは摩訶不思議。世に持つべきは友であり、朋ですなあ。
 



投稿者: 一考    日時: 2002年02月25日 23:54 | 固定ページリンク





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