☆は店主お薦め、※はオフィシャル・ボトルもしくは蒸留所元詰の意で用いました。

☆【アードベッグ10年】※

   46度のオフィシャル・ボトル。

   ノン・チル・フィルターを謳い、往年のアードベッグを意識して造られたファースト・エディション。ボトリングは2000年初頭。

   フロア・モルティングが最後に行われたのは1976年から77年にかけてであり、80年代の閉鎖期間の後はポート・エレンが供給する麦芽を用う。木の幹をかじるようなスモーキー・フレーバは望むべくもないが、アードベッグの先行きへの不安を解消させるにたる出来映え。特にヘビーにピートを焚き込んだ麦芽を用いたモルト・ウィスキーの登場には、今暫くの猶予が必要。

☆【アードベッグ '91(シグナトリー)】

   8年ものにして43度。4樽、1945本のリミテッド・エディション。

   97年にグレンモーレンジ社がアードベッグ蒸留所を買収。当ボトルは買収後、残されたモルトを独立瓶詰業者シグナトリー社が入手、ボトリングを施したもの。

   ピーティーでスモーキーな味わい。微かな消毒液の臭い。オフィシャルの10年ものが頒されるまではアードベッグの稟質を知るラストチャンスと囁かれていた。

☆【アードベッグ '90(マクギボン)】

   プロヴァナンスの10年もの、バーボン・カスクの43度。

   グラスゴーのインデペンデント・ボトラー、ダグラス・マクギボン社のセレクト。マクギボン社はダグラス・レイン社の系列会社。2001年、本品の10年ものも頒されている。なお、オフィシャルでプロヴァナンスと題する74年蒸留、98年ボトリングのリミテッド・エディションが頒されているが、それとお間違いなきよう。

   頗るユニークにして、かつ巧緻な味わいのアードベッグ。微かなバニラ香を持つミディアム・ボディ。口に含むと甘いフローラルな味わい。ただし、ラスト・ノートは正真のアードベッグ。G.M社のボトルと比してはるかにソルティー、長く続くフィニッシュは申し分なし。

 【アードベッグ '90(ダグラス・レイン)】

  オールド・モルト・カスクの一本。10年もの、50度のプリファード・ストレングス。限定348本のシングル・カスク。

  G.M社のボトルと比して、アルコール度数がもたらすインパクトあり。マクギボンのボトルが持つフローラルな香りはなく、頑強なまでの塩味。共にポート・エレンの麦芽を用いるも、よりオーソドックスな味わい。

☆【アードベッグ17年】※

   40度のオフィシャル・ボトル。

  バランタインの「魔法の七柱」のひとつ。因みに、バランタイン17年のブレンドの核をなした「魔法の七柱」とは、スキャパ、ミルトンダフ、プルトニー、バルブレア、グレンバーギ、グレンカダム、そしてアードベッグ。

   80年代初頭に蒸留所が閉鎖される直前のモルトを用いる。シグナトリー社の74年のボトルと比してスモーキー・フレーバーは控え目に、ヨード香は抑えられている。相応分、甘味を伴うフレーバーに優れ、喉ごしは淡くまろやか。

 【アードベッグ '78(G.M)】

   コニッサーズ・チョイスの21年もの、40度。

   他社のボトルと比して、G.M社のアードベッグのピート香が控えめに感じられるのはアルコール度数のせい。

   ゴードン&マクファイル社からは他に少量だが、いくつかのヴィンテージが頒されている。入手可能なのは74、75、76、78年の各ボトル。

【アードベッグ '77】

   24年もの、46度のオフィシャル・ボトル。

   前回の10年ものと同じくノン・チル・フィルター。本品は2001年発売のグレンモーレンジ社二度目のヴィンテージ・ボトル。

 【アードベッグ '74(G.M)】

   コニッサーズ・チョイスの22年もの、40度。

   アイラ島で最もクラシックなモルトであり、ピート香やスモーキー・フレーバーの強さでは右に出るものなし。生産規模が小さく、瓶詰業者のボトルも少量のため、極めて入手は難しい。

 【アードベッグ '91(S.M.S)】

   ディスティラリー・コレクションの一本。バーボン樽の10年もの、60.1度のカスク・ストレングスにしてシングル・カスク。

   グラスゴーのインデペンデント・ボトラーであるマルコム・プライド社のボトリング。リリースはスコッチ・モルト・セールス社。

   アードベッグのカスク・ストレングスは急激に少なくなってきた。かてて加えて蒸留所からボトラーへの樽売りに制限が設けられた。もともと生産量が僅少のため、やむを得ないのだが、オーナーのグレンモーレンジ社はどうやらオフィシャル・ボトルに専心するもようである。

☆【アードベッグ '77】※

   24年もの、46度のオフィシャル・ボトル。

   前回の10年ものと同じくノン・チル・フィルター。本品は2001年発売のグレンモーレンジ社二度目のヴィンテージ・ボトル。

 【アードベッグ '90(マーレイ・マクデヴィッド)】

   バーボン樽の9年もの、46度のシングル・カスク。

   他に、同じヴィンテージの8年もの、91年の9年ものも頒されている。

   バーボン・カスクとはアメリカン・オークで作られた180のバレル樽。バーボン・ウイスキーの熟成には内側を焦がした新樽しか使えないため、廃樽をスコッチに利用。ちなみに、ラフロイグはすべてテネシー産バーボン樽を熟成に用いる。

☆【アードベッグ '74(シグナトリー)】

   23年もの、43度。3樽、限定610本のリミテッド・エディション。他に同じヴィンテージでカスクの異なるものあり。

   同じヴィンテージのカスク・ストレングスには一歩譲るが、当ボトルもまた、こしかたのアードベッグを語るに欠かせぬ一本として記憶されるは必定。

☆【アードベッグ '75】※

   23年もの、43度のオフィシャル・ボトル。

   74〜75年は殊更に美味にして稀少。本品は98年発売のグレンモーレンジ社初のヴィンテージ・ボトル。

   微かな甘味を含んだ磯の香。しっとりと落ち着いたやや骨太の酒質。

   極端な煙臭さ、いつまでも残るスモーキー・フレーバー。

 【アードベッグ '75(ダグラス・レイン)】

   オールド・モルト・カスクの一本。24年もの、50度のプリファード・ストレングス。713本のリミテッド・エディション。

   他にラ・リザーヴ社、ヴィンテージ・モルト社、キングスバリー社、インタートレード社、スコマ社の各ボトルがあるが、キングスバリー社のケルティック・コレクションから頒された73年と74年蒸留のボトルは特筆大書すべき逸品。

☆【アードベッグ '78 カスク・ストレングス(アデルフィ)】

   バーボン樽の19年もの、56度、限定216本のシングル・カスク。

   ザ・アデルフィ・ディスティラリー社は、1902年に閉鎖したアデルフィ蒸留所のオーナーの末裔が1993年に創業。低温濾過、即ちフィルターの無使用と無着色のカスクを専門とする。同社のモルトは当たり外れがなく、常にベスト・コンディション。香味共に申し分なく、最も信頼できる瓶詰業者のひとつ。

   生海苔を想起させるソルティーな香り、ビター・チョコのフィニッシュ等が特徴。

 【アードベッグ '67 カスク・ストレングス(ダグラス・レイン)】

   オールド・モルト・カスクの一本。ダーク・シェリー樽の32年もの、47.5度のカスク・ストレングス。限定185本のシングル・カスク。

   ダグラス・レイン社からは本品以外にも、樽違いのカスク・ストレングス4種が99年11月に頒された。すべてシングル・バレルのため、アルコール度数はボトルによって異なる。その後、プリファード・ストレングスの50度にて、73年蒸留の27年ものと75年蒸留の24年ものとが頒されている。そちらはシェリー・カスクでなく、オーク樽を熟成に用いる。

☆【アードベッグ '74 カスク・ストレングス(シグナトリー)】

   オーク樽の23年もの、51.2度、2樽、限定386本のシングル・カスク。

   同社が扱うモルトには、他では飲めない希少なシングル・カスクが多い。

   アルコール度数の違いは、香気を越えた味わいの階調をウィスキーにもたらす。飲み干した後のグラスの内側の残り香を楽しんで頂きたい美酒。

 【アードベッグ30年】※

   40度のオフィシャル・ボトル。

   89年に操業を再開したものの、フロア・モルティングは廃止。97年にはアライド・ディスティラーズ社からグレンモーレンジ社の傘下に入った。伝統の風味への影響が懸念されたが、杞憂に終わった。

   他を圧倒するピート香やヨード香はないが、柔らかいタールの臭い、仄かなカカオの香り、甘いバニラの感触等、頗るエレガントなフルボディに仕上がっている。

 【アードベッグ '67 カスク・ストレングス(シグナトリー)】

   ダーク・オロロソの樽による30年もの、49.8度、限定536本のシングル・カスク。しかもフィニッシュに用いたのではなく、30年間ひたすらシェリー樽で眠りについていたモルト。シグナトリー社が蔵するアードベッグ一番の稀少品であり、かかるボトルにこそシグナトリーの真骨頂がある。

☆【カリラ '91(ドナート)】

   ダン・イーディアンの一本。10年もの、46度。5樽、1790本のリミテッド・エディション。

   ドナート社はイタリアのジェノヴァに在する酒商。ダン・イーディアンとのコレクションを頒す。ちなみに、ダン・イーディアンとはスコットランドの古都エディンバラのケルト語読み。

☆【カリラ '90(G.M)】

   コニッサーズチョイス・シリーズの9年ものにして、40度。

   2000年末、マクファイル・プライベート・コレクションと題し、コニャック、クラレット、カルヴァドスの3種の樽をフィニッシュに用いたボトルがそれぞれ頒された。本品と同じヴィンテージにて、9年ものカスク・ストレングス。ただし、カリラのような超個性的なウィスキーに、かかるカスクが相応しいかどうかは些か疑問。

 【カリラ '89(ウィルソン&モーガン)】

   バレル・セレクションの一本にして、9年もの、46度。

   更なる刺激を求めるアイラ党にお薦めの超辛口。アルコール度数の違いが、ピリピリ感を増幅。一度飲んだら病みつきに。

 【カリラ '88(ハート・ブラザーズ)】

   10年もの、43度。

   シングルモルトには然るべき味わい方がある。ワインを嗜むのに水で割ったり、氷を入れたりしないのと同様に、まず常温で味わって頂きたい。味覚を支える最大の要素である香りは冷やされることによって萎えてしまう。静かにグラスを回し、豊かな香りを聴き、匂いに注視して頂きたい。

☆【カリラ '89(モンゴメリー)】

   11年もの、43度のシングル・カスク。

   アルコール度数の割にスモーキーな味わいが強く残る。

   モンゴメリー社はアンガス・ダンディ社の傘下、従って、マキロップ社とは兄弟会社になる。ボトリング・ライセンスを持ち、樽と樽とのブレンドは一切行わず、全くのスモール・バッチを売りとする。初回10種類ほどのボトルが頒されたが、我が邦に入荷したのはマッカラン、スキャパ、本品の3種のみ。

☆【カリラ '89(ケイデンヘッド)】

   バーボン・バレルの10年もの、46度、限定276本のシングル・カスク。

   バーボン樽を熟成に用いたカリラは珍しく、若干甘味が添付されることによって、味わいに深みが増す。同じヴィンテージでカスク・ストレングスも頒されている。

 【カリラ '92(V.M)】

   ヴィンテージ・モルト社が頒するクーパーズ・チョイスのニュー・ボトル。オーク・カスクの8年もの、43度。

 【カリラ '90 カスク・ストレングス(クライズデール)】

   バーボン・バレルの9年もの、57.9度、限定235本のシングル・カスク。他に9年もの、57度、限定234本の樽違いあり。

   バーボン・ウィスキーにせよ、モルト・ウィスキーにせよ、熟成が過ぎると、個性が喪われ、ひたすらマイルドな味わいになってしまう。酒質が大きく影響するので、一概には言えないが、8年から12年位が酒の稟質を知るに最適。

 【カリラ '92 カスク・ストレングス(V.M)】

   クーパーズ・チョイスのニュー・ボトルの一本。オーク・カスクの8年もの、59.1度。

 【カリラ '90(ブラッカダー)】

   オーク樽の8年もの、43度のシングル・カスク。

   数多いカリラの中では比較的穏やかな味わい。薬品臭が淡いだけに、スウィートかつペパリーなフィニッシュが強調される。

 【カリラ '90(ヴェリエ)】

   バーボン・バレルの9年もの、43度。3樽の限定品。

   伊太利亜向けにリリースされたシグナトリー社のコレクション。発売元のヴェリエ社は伊太利亜ジェノヴァの酒類輸入業者。他に84年蒸留の16年もの、75年蒸留の24年ものが頒されている。

 【カリラ '90(シグナトリー)】

   オーク樽の9年もの、43度、限定296本のシングル・カスク。

   独逸向けにリリースされたコレクション「ザ・シングル」の一本。ブラッカダー社のカリラと共に味わいは幾分軽く、物足りない思いも。気落ちし、情けない気分の時に最適。

☆【カリラ '89(シグナトリー)】

   バーボン・バレルの10年もの、43度、限定620本のシングル・カスク。

   ミレニアム・エディションには10年ものと11年ものの2種があり、他に586本のリミテッド・エディションもある。カスク・ナンバーはすべて通し番号。従って香味に差異はなく、ほぼ同一の内容。

   ここ数年のシグナトリー社のモルトには巧緻なテイストのものが多い。総じて僅かに甘く、シェリー樽を用いたダブル・マチュアードのような趣があり、バランスのよさは特筆もの。本品にしてもウイルソン&モーガン社のカリラと飲み比べるその差は顕著。後者のハードかつパワフルな味わいと比して、これが同じカリラかと思うほど、品よく仕上がっている。

 【カリラ '89 カスク・ストレングス(マキロップ)】

   マキロップ・チョイスの1本。9年もの、56.9度のシングル・カスク。

   イアン・マキロップ社はグラスゴーのインデペンデント・ボトラー。他にロンバード社やスコッツ・コレクション社からカスク・ストレングスが頒されている。

☆【カリラ '81(G.M)】

   コニッサーズ・チョイスの一本。14年もの、40度。

   アイラとしては比較的軽いモルトだが、飲み口以外は横紙破り。ローランドのような淡い色合いと、激しい香味とのアンバランスが愉快。

☆【カリラ '89 カスク・ストレングス(V.M)】

   ヴィンテージ・モルト社が頒するクーパーズ・チョイスの一本。オーク・カスクの9年もの、60.2度。

   比較的若いカスク・ストレングスの中では秀逸。うがい薬や消毒液の錯綜した臭い。スモーキーかつシャープな辛口。ピリッとした辛さが舌に残り、余韻が長い。

 【カリラ '80(V.M)】

   クーパーズ・チョイスの一本。オーク・カスクの19年もの、43度。

   頗る美味なのだが、お薦めは上記のカスク・ストレングス。ポート・エレンの閉鎖は83年。従って若いポート・エレンは既に飲めなくなった。せめてカリラは若いモルトで「スランジバー」といきたいもの。

 【カリラ '90 カスク・ストレングス(シグナトリー)】

   ナチュラル・ハイ・ストレングスの一本。3385days oldと題する9年もの、57.5度。

   シグナトリー社は1988年の創業、質量共にコレクションの厚みで識られる。

 【カリラ '89(マーレイ・マクデヴィッド)】

   バーボン樽の8年もの、46度のシングル・カスク。

   他に、同じヴィンテージの9年ものも頒されている。

   ポット・スティルは6基、アイラ島の蒸留所の中では最大級の生産量を誇る。仕込用水は1.5キロ離れたナムパン湖の水を用いる。好釣場として識られた湖である。

 【カリラ '89 カスク・ストレングス(ケイデンヘッド゙)】

   オーセンティック・コレクションの一本。バーボン・バレルの9年もの、60.1度。限定222本のシングル・カスク。

   本品以外にもケイデンヘッド社からは数種のカリラが頒されている。

 【カリラ '84 カスク・ストレングス(ウィルソン&モーガン)】

   バレル・セレクションの14年もの、58.1度。

   ボトリングの段階でウィスキーは割水され、アルコール度数を調整される。樽出し即ちカスク・ストレングスだと採れる本数が少なくなり、割高になるのは致し方ない。

 【カリラ '82(ウィルソン&モーガン)】

   バレル・セレクションの12年もの、46度。

   ゲール語のため発音が難解、カオル・アイラとの表記を屡々見受けるが、そこはリエゾン、あまり難しく読まないで頂きたい。意はアイラ海峡。ちなみに、アイラ海峡は海豹の生息地であり、ロブスターや蟹の選れた漁場でもある。アイラ・モルトが魚介類と相性がよいのは当然。

☆【カリラ15年(U.D)】※

   ユナイテッド・ディスティラーズ社の花と動物シリーズの一本。43度のオフィシャル・ボトル。

   G.M社のコニッサーズ・チョイスの14年ものと比して、色は淡いがバランスのよさで一歩抽(ぬき)んでる。ピリピリ感がなくまろやか、より繊細にしてしたたかな味わい。オフィシャル・ボトルの強みが遺憾なく発揮されている。

 【カリラ '82(シグナトリー)】

   オーク・カスクの16年もの、43度。2樽、896本の限定品。

   同じヴィンテージの15年ものも頒されている。

   シグナトリー社はエディンバラに事務所兼倉庫を持ち、ボトリングから保管に至るすべての業務をを行う。ダンイーダン、サイレント・スティル等、多彩なコレクションで識られる。

☆【カリラ '81 カスク・ストレングス(G.M)】

   18年もの、64度。4樽の限定品。

   力強いヨード香と薬品臭、海藻を食むような塩辛さ。舌を刺す超辛口のフィニッシュ。鼻毛がちじれる刺激臭にどっぷり浸れること間違いなし。

 【カリラ '81(サマローリ)】

   14年もの、45度。504本のリミテッド・エディション。

   サマローリ社は伊太利亜ブレシアの酒商。同社は樽ごとに飲み頃を見極めた上でボトリングを行う。従って、コンディションは頗るよろしく、また檻が多いのが特徴となっている。

 【カリラ '81 カスク・ストレングス(U.D)】※

   オフィシャルの花と動物シリーズのカスク・ストレングス。15年もの、63.8度。

   フルボディで超ドライ。焦げたヘザーの根のアロマが顕著。ちなみに、本シリーズはすべてリミテッド・エディション。他にアバフェルディ、オルトモーア、クライヌリッシュ、ダルユーイン、ブレア・アソール、モートラック、リンクウッド、ローズバンクが頒されている。

☆【カリラ '74 カスク・ストレングス(シグナトリー)】

   オーク・カスクの23年もの、60.5度、限定358本のシングル・カスク。

   樽違いで74年蒸留の17年もの、22年もの、75年蒸留の24年もの、25年もの等が頒されている。

   とにかく個性が強烈、あまりの臭さにデンタル・クリニック・モルトとの異称も。虫歯にお悩みの方に、お薦めの一本。

 【カリラ '74 カスク・ストレングス(キングスバリー)】

   リフィール・バーボン樽の23年もの、60度のシングル・カスク。

   キングスバリー社は倫敦に本社を持つ酒商。すべてがシングル・カスクで、低温濾過は一切施されない。

 【カリラ '75 カスク・ストレングス(レア・モルト)】※

   21年もの、61.3度のオフィシャル・ボトル。

   ユナイテッド・ディスティラーズ社のレア・モルト・セレクションの一本。U.D社はギネス・グループの一員にして、半数近い蒸留所を所有するスコッチ業界の最大手。他に、74年蒸留の20年ものと77年蒸留の21年ものあり。

 【ブナハーブン12年】※

   43度のオフィシャル・ボトル。

   ほとんどピートを焚かないので、アイラ独特のピーティーな風味が抑えられている。ライト感覚とフレッシュな潮の香が受け、アメリカでの人気が高い。

   オフィシャルの30年ものの他に、G.M社、キングスバリー社、ダグラス・レイン社、シグナトリー社、ブラッカダー社等から多くのボトルが頒されている。

 【ブルイックラディ10年】※

   43度のオフィシャル・ボトル。

   他のアイラ・モルトと比して、際立ってクリーンなモルトであり、口当たりは柔らかくドライ。バランスの良さは結構だが、いまいち個性に欠ける。突然の操業停止に見舞われ、95年1月に閉鎖。スペイサイドのタムナヴーリン、ハイランドのタリバーディンと共にエディンバラ12年の原酒モルト。

   ラム・レーズンの甘く揺らめく香り。水で薄めると潮の香が微かに立ち昇る。

   フィニッシュはドライ、暖かみのある切れ上がりを経てスイートに。

 【フィンラガン12年 カスク・ストレングス(V.M)】

   ブルイックラディをメイン原酒とするヴァテッド・モルト。ボウモアとカリラの間の高地に在った伝説の砦がブランドの由来。ヴィンテージ・モルト社のリリースだが、他に10年ものカスク・ストレングスと43度のボトルも頒されている。

   アイラ・モルトの特徴である潮や海藻の香りをしっかり具えている。樽出し60度がもたらす、アグレッシブにしてソバージュなフィニッシュ。

 【ブルイックラディ '86 カスク・ストレングス(ブラッカダー)】

   オーク樽の12年もの、57.3度のシングル・カスク。

   ロッホインダールと名付けられたインデペンデント・ボトルも数種頒されている。ちなみに、ロッホインダールとはブルイックラディ蒸留所からさらに西へ2マイル、ポート・シャーロッテにかつて在した蒸留所の名前。独立瓶詰業者ダグラス・マクギボン社の2人のオーナーの祖父がマッシュ・ハウスを担当していた蒸留所である。

 【ブルイックラディ26年(スティルマンズ・ドラム)】※

   リミテッド・エディションであるスティルマンズ・ドラムの一本、45度。

   スコットランドは西の端に位置する蒸留所。アイラ・モルトの中でもっとも軽く、繊細なキャラクターを持った食前酒。蒸留所名はゲール語でブルア・ホラディッヒと発音、海辺の意。オフィシャル・ボトルのラインナップは10年、15年、21年、26年もの等。

   他に、G.M社、ケイデンヘッド社、マーレイ・マクデヴィッド社、シグナトリー社、アデルフィ社、スコッツ・セレクション社、ヴィンテージ・モルト社、ウイルソン&モーガン社等から、多くのボトルが頒されている。

☆【ポート・エレン '80(G.M)】

   コニッサーズ・チョイスの16年もの、40度。

   80年は別して美味とされる。酒質が軽くドライなため食前酒に。同一のヴィンテージで14年、16年、ラベルを変えて17年、19年の各種ボトルが頒されている。

   接着剤と含嗽(がんそう)剤を綯い交ぜたエキセントリックな臭い。塩辛く鋭角なこく。舌を刺す刺激と極めてスパイシーなフィニッシュ。

 【ポート・エレン '82(シグナトリー)】

   オーク樽の15年もの、43度。2樽、710本のリミテッド・エディション。

   現在はモルトスター(麦芽を専門につくる業者)であり、アイラのすべての蒸留所と隣のジュラにモルトを出荷している。蒸留所の操業は停止されたが、とりわけ82、83年は蒸留所最後の年。この年のモルトが売り出されるのは、ストックが底をついてきた証。

   同年のヴィンテージの17年ものバーボン・カスクがマーレイ・マクデヴィッド社から、83年蒸留の13年ものがシグナトリー社から頒されている。

 【ポート・エレン '76(ウィルソン&モーガン)】

   バレル・セレクションの一本にして21年もの、46度。

   かつてオフィシャル・ボトルは頒されていないが、他にもケイデンヘッド社、スコッツ・コレクション社、ムーン・インポート社等、インデペンデント・ボトルが出回っていた。

 【ポート・エレン '79(キングスバリー)】

   オーク・カスクの16年もの、43度のシングル・カスク。

   押し寄せる胡椒、ヨード、海藻、鞣し革の香り。アイラ党を熱狂させるオイリーなボディとピクリング・スパイスを噛みしだくような深く長いフィニッシュ。

☆【ポート・エレン '81(マクギボン)】

   プロヴァナンスの一本。シェリー・カスクの18年もの、43度。他に、82年蒸留の17年ものも頒されている。

   50年代後半、冷蔵庫と氷の普及によって、冷やされたウィスキーが嗜まれるようになった。チル・フィルターが施されていないウィスキーに水もしくは氷を加えるとウィスキーは半濁する。その原因はウィスキーの澱、即ち樽の中に含まれる木屑の類なのだが、それが嫌われたのである。心ない人々の嗜好によって、60年代以降、大方のウィスキーにチル・フィルターが施されるようになった。しかし、その澱、言い換えれば靄あるいは霞のようなものにこそウィスキーの神秘があり、微妙な持ち味の欠かせぬ要因となっている。瓶詰業者のボトルにオフィシャルよりも美味なものが多い理由も、そのあらかたは低温濾過の有無にある。

☆【ポート・エレン '75(シグナトリー)】

   ミレニアム・エディションの一本。オーク樽の24年もの、43度、402本のリミテッド・エディション。

   83年5月に操業を停止したにもかかわらず、シグナトリー社は然るべきストックを蔵していたのであろう。一手販売の観あり。

 【ポート・エレン '81(ダグラス・レイン)】

   フィノ・シェリー・カスクの19年もの。50度のプリファード・ストレングス、474本のリミテッド・エディション。

   シグナトリー社の次はダグラス・レイン社。売り頃とみたのか、一挙に7種のポート・エレンが頒布された。兄弟会社のマクギボン社のボトルを加えると計9種にもなる。 アイラ島では、カリラと共に最大級の生産量を誇った蒸留所である。まだ暫くは入手可能なようである。

 【ポート・エレン '81 カスク・ストレングス(ザ・ボトラーズ)】

   リフィール・シェリー樽の19年もの、60.4度のシングル・カスク。

   ザ・ボトラーズ社はエディンバラのインデペンデント・ボトラー。同じエディンバラのジェームズ・マッカーサー社と共に、閉鎖された蒸留所の珍しいモルトを取り扱うことで識られる。本品のカスクは再使用のため、ほとんどシェリー香は感じられない。他にアルコール度数の異なる樽違いあり。

 【ポート・エレン '78(グレン・スコマ)】

   オーク・カスクの22年もの、43度。限定388本。

   グレン・スコマ社はキルシュ・インポート社と共にドイツのボトラー。モルト愛好家に過ぎなかったオーナーの情熱がボトラーの設立に至った。伊太利亜のドナート社共々、先行きが楽しみなボトラーである。

   スモーキーでピーティーなファーストインパクトと強烈なパワーの後のフィニッシュに感じるほのかな甘さ、典型的なポート・エレンのテイスト。

 【ポート・エレン '79 カスク・ストレングス(G.M)】

   18年もの、61.1度、2樽の限定品。

   カリラとポート・エレンは共に、店主の嗜むところ。芋焼酎同様、一度嵌ると抜けられなくなる。

☆【ポート・エレン '78 カスク・ストレングス(レア・モルト)】

   U.D社のレア・モルト・セレクションの一本にして20年もの、60.9度。

   最終ボトルとして、同じヴィンテージの22年ものが2000年末に頒された。

   同セレクションには稀少にして高価なモルトが多く、グレンユーリー・ロイヤルやロイヤル・ロッホナガー、セント・マグデラン、ヒルサイド等、大書特筆すべきもの綺羅の如し。U.D社にはポート・エレンの在庫が多く、ダグラス・レイン、マクギボン両社のボトルもU.D社からの樽買いになるもの。

 【ポート・エレン '79(ダグラス・レイン)】

   オールド・モルト・カスクの一本。プレーン・オーク樽の21年もの、50度のプリファード・ストレングス。限定318本。

   他に78年蒸留の21年ものと22年ものあり。

   ダグラス・レイン社の創業は1950年。グラスゴーでスコッチのブレンドと輸出を営む。50度に限るのが同社のポリシーだが、熟成期間が長く、アルコール度数が50度未満のものはカスク・ストレングスとして頒される。

 【ポート・エレン '76 カスク・ストレングス(シグナトリー)】

   オーク樽の23年もの、55.6度、限定296本のシングル・カスク。

   同じカスク・ストレングスで80年蒸留の16年ものも頒されている。

   ポート・エレンの香りを正露丸と示唆したのは土屋守さんだが、まさにデンタル・クリニック・モルトに相応しいのはカリラとポート・エレンの二つ。ピリピリと鼻毛がちじれるような刺激臭、饐(す)えたヨードの臭い、病膏肓に至ったアイラ党が必ずや立ち戻るモルト。

 【ボウモア12年】※

   40度のオフィシャル・ボトル。

   ラベンダー、ヘザー、ハニー、カラント等々、綺羅を競う香気とスモーキー・フレーバーやピート香との微妙なバランスは謎とされ、喧(かまびす)しい好事家の糧になっている。フィニッシュは穏やかな辛口。

   佐渡島ほどの大きさのアイラ島には8つの蒸留所がある。ボウモアはそれらの中でもっとも古く、麦芽製造を自ら行う数少ない蒸留所のひとつである。島の最高峰ベン・ベイギールの山麓から流れ出る、ラーガン川のピート色の濃い良質の水を仕込みに用いる。

☆【ボウモア・シングル・セレクト】※

   40度のオフィシャル・ボトル。

   オーナーのサントリーが力を入れるボウモアの主力商品。香りのベクトルはレジェンドとサーフの中間。かかるバランスのよい原酒が長期熟成されると美味なウィスキーになる。ダーケストと共にオフィシャルの中では一押し。

 【ボウモア・レジェンド】※

   40度のオフィシャル・ボトル。

   オフィシャル・カスクの芳香はきれが悪く、杯を重ねるには辛いものがある。その点、本品はサーフや12年ものと異なり、コスメティックな香りは淡く、アルコール度数も40度に抑えられている。ボウモアが本来持つライトな味わいを愉しむに最適。

☆【ボウモア '92(ドナート)】

   ダン・イーディアンの一本。8年もの、46度。2樽、725本のリミテッド・エディション。

   本品はマーレイ・マクデヴィッド社のボトルと共に、セレクト系のボウモア。

 【ボウモア・サーフ】※

   43度のオフィシャル・ボトル。

   セレクト、レジェンド、サーフの3種類のモルトの中では最も香りが強く、オフィシャルの12年ものに準じる。

   酒質の重い南と軽めの北、ちょうどその中間に位置する最古参の蒸留所。アイラ・モルトの全体像を識るのに最適であり、出色の食後酒でもある。

☆【ボウモア '91(チーフテンズ)】

   イアン・マクロード社のチーフテンズの一本。バーボン・バレルの10年もの、43度。2樽、798本のリミテッド・エディション。

   本品はジョン・ミルロイ社のボトルと共に、レジェンド系のボウモア。アフター・テイストに爽やかな甘味。

☆【ボウモア '88(マクギボン)】

   プロヴァナンスの一本。12年もの、43度。

☆【ボウモア '89(ダグラス・レイン)】

   ナチュラルカラーの10年もの、50度のプリファード・ストレングス、402本のリミテッド・エディション。

   本品の香味はレジェンドとセレクトのちょうど真ん中。至って飲みやすく、まずまずの及第点。ただし、本品にはチル・フィルターが施されている。オールド・モルト・カスクはチル・フィルターが施されたものがクリアー・ボトルに、施されていないものがグリーン・ボトルに詰められる。

 【ボウモア '89 カスク・ストレングス(ウィルソン&モーガン)】

   バレル・セレクションの一本にして10年もの、55度。

   香味はダグラス・レイン社やハート・ブラザーズ社のボウモアと似ているが、アルコール度数は異なる。バーボン・カスク特有のパワフルな味わいが身上。

 【ボウモア '89 カスク・ストレングス(ロンバード)】

   ジュエル・オブ・アイラの一本。10年もの、65.3度のシングル・カスク。

   オフィシャル・カスクほど過激ではないが、本品もサーフ系。欧州ではこちらのボウモアが人気筋。ペルノ、バスティスト、アニゼットに親しむお国柄である。強い香りが好まれるのは当然。

   おなじヴィンテージ、同系列のカスク・ストレングスにケイデンヘッド社の10年ものがある。

☆【ボウモア '89 カスク・ストレングス(クライズデール)】

   9年もの、58.7度、限定306本のシングル・カスク。

   単一の樽から何ら手を加えずに瓶詰め、モルト本来のボディとフレーバーを最大限引き出したクライズデール社のボトル。

   昨今のボウモアの一部商品はベンゾイン系の化粧品臭に汚染されているのではないかと思うくらい、香りのベクトルが強い。ところが、独立ボトラーのそれにはレジェンド系のモルトが多く販売され、かかる異臭があまり見受けられない。ミルロイ社のボウモアと共に当ボトルもお薦めの品。

☆【ボウモア '89 カスク・ストレングス(ブラッカダー)】

   ロウ・カスクの一本。オーク・バレルの64度。限定265本のシングル・カスク。

☆【ボウモア・ダーケスト】※

   43度のシェリー・カスク。

   本品はシェリー樽を熟成に用う。他にカスク・ストレングスだが、オフィシャルとしてオーク、クラレット、ポートがあり、クラレットは更にダスクとクラレットの2銘柄に分かれる。その理由は用いる樽の格付けの違いにある。

 【ボウモア カスク・ストレングス】※

   龍涎香、麝香、安息香等、ベンゾイン系の癖の強いエキゾチックな芳香と珈琲リキュールの甘い香り、消化不良を起こしかねない矯激なオフィシャル・カスクにして56度。

   飲む度に一昔前の金ラベル、ずんぐりむっくりのボトルが恋しくなる。ちょいと行き過ぎじゃありませんか。

 【ボウモア '89(マーレイ・マクデヴィッド)】

   バーボン樽の10年もの、46度のシングル・カスク。

   「現オーナーのサントリーは、ウエアハウスのひとつを蒸留に伴う熱水と共にコミュニティーに寄贈、倉庫は町営の温水プールと化した。頭から飛び込む他、このリッチで贅沢極まりない一杯のウィスキーを嗜む術はない」とのコメントが添えられている。化粧品臭はあるものの、頗るシンプル。味わいはセレクト系にして、まずまずの仕上がり。

☆【ボウモア '90(ジョン・ミルロイ)】

   ご存じミルロイおじさんのセレクション。9年もの、プリファード・ストレングスの50度、シングル・カスク。

   近年、やたら種類の増えたオフィシャル・ボトルとは異なり、昔ながらのボウモアの味を引き出すのに成功している。本品はレジェンド系のボウモア。他ではジェームズ・マッカーサー社とスコッチ・モルトウィスキー・ソサエティ社のボウモアがサーフ系。さて、いづれをチョイスなさるか、お悩みいただこう。

 【アイランド・オブ・アイラ '90(ジョン・ミルロイ)】

   オーク・カスクの9年もの、プリファード・ストレングスの50度、シングル・カスクにして、中味はボウモア。

   ミルロイ社のゴールデン・ストレングスにはセレクションとミレニアム・セレクションの2種のボウモアがあり、共に味わいは似ている。しかし、同じミレニアム・セレクションでも本品の香味は前2者とは異なる。

☆【ボウモア21年】※

   本品は43度。更なる上級酒に25年、30年、38年等がある。

   ボウモアの創業は1779年。海に浮かぶ要塞のような蒸留所は年中、西風に吹き曝され、絶えず波に洗われている。ブラック・ボウモアと呼ばれる貯蔵庫は海面より低く、冷たく湿った状態にある。潮騒を子守唄にブリティッシュ・ファインスピリッツは長い眠りにつく。

☆【ボウモア・ダスク】※

   14年ものオフィシャル・ボトルにして50度のカスク・ストレングス。

   本品は珍しいクラレットによる熟成。コスメティックな香りは幾分和らぎ、その代わり、京都の麩饅頭のような苦みが後口に残る。好感の持てる苦みなのだが、それが渋みでないのが不思議、樽のなせる魔術の一種。

   ちなみに、クラレットとはボルドーの赤ワインのこと。同様のものにグレンモーレンジのクラレット・フィニッシュがあり、白ワインではグレン・マレイ蒸留所からシャルドネとシュナンブランの樽を熟成に用いたモルトが頒されている。

☆【ボウモア・ボヤージュ】※

   56度のカスク・ストレングスにしてオフィシャル・ボトル。

   本品はポート・ウッドを熟成に用いたリミテッド・エディション。クラレットより入手しやすいが、味わいはこちらの方が上。他にポート・ウッドでは、クラガンモア、バルヴィニー、グレンモーレンジ、テナニャック等がある。

 【ボウモア '84 カスク・ストレングス(ジェームズ・マッカーサー)】

   ミレニアム・シリーズの一本。リフィール・シェリー樽の15年もの、60度。

   スコッチ・モルトウィスキー・ソサエティ社のボウモア同様、サーフ系のモルトを用う。リフィールにしてはシェリー香が強く、綺羅を競う香気を好まれる方に最適。ただし、ソサエティのカスクは現時点で51樽目、即ち51種類のボウモアが頒されたことになる。過去頒されたボトルの大半はセレクト系の味わい、吟味された樽が多いので要注意。

☆【ボウモア '73(キングスバリー)】

   キングスバリー社は倫敦に本社を持つ酒商。本品はリフィール・バーボン樽の25年もの、46度のシングル・カスク。

   ミディアム・ピートやスモーキー・フレーバーの香り、沃素のキャラクター等、73年ものだけに安心。シグナトリー社の74年蒸留23年ものカスク・ストレングスやジョン・ミルロイ社のボトルと同様に、こしかたのボウモアの味を愉しむことが出来る。

 【ヴィンテージ・アイラ・モルト(シグナトリー)】

   エディンバラの独立瓶詰業者シグナトリー・ヴィンテージ社が5年もののラガヴーリンを瓶詰め。40度。

   燻香とピート香は、ラガヴーリンをより軽くシャープにした印象。

   仄(ほの)かに塩味の伴う爽快なフィニッシュ。

 【ヴィンテージ・アイラ・モルト カスク・ストレングス(シグナトリー)】

   上記ラガヴーリンの樽出し原酒、57.4度のハイストロング。

   他にケイデンヘッド社、スコッチ・モルトウィスキー・ソサエティー社等からカスク・ストレングスが頒されている。

☆【ラガヴーリン16年】※

   U.D社のクラシック・モルト・シリーズの一本、43度のオフィシャル・ボトル。

   重厚かつなめらか、ベルベットのような味わい。焦げたヘザー、強いピート香、潮、海風、海藻の香り等、一度飲んだら病みつきになる銘酒中の銘酒。強烈な個性を包むエレガントなこくとシェリー酒の妙なる甘味。フィニッシュはパワフルでスモーキー。愛惜おくあたわざる逸品。

   かつてのオフィシャルは12年もの。80年代末に終売になったが、激しいピート香を持つドライなモルトだった。香味はムーン・インポート社のそれに近かったと記憶する。

 【アイラ8年(イアン・マクロード)】

   中味は若く軽いのりのラガヴーリン。

   スカイ島の豪族、マクロード家のイアン・マクロードがリリース。同社はイングランドでのグレンファークラスの発売元。ブレンデッド・ウィスキーの「アイル・オブ・スカイ」「クイーンズ・シール」「マリー・ボーン」で識られ、「チーフティンズ・チョイス」とは姉妹関係にある。

☆【クラシック・オブ・アイラ カスク・ストレングス(V.M)】

   ヴィンテージ・モルト社のノン・エイジ。オーク・カスク、58度のシングル・カスク。スコッチ・モルト・セールス社のリリース。

   中味はラガヴーリン。毎年カスクが変わるので定かではないが、8年から10年ものと思われる。愕くほどパワフルで刺激的。オフィシャルと比して、ヨードとピートの香りが著しい。

☆【ラガヴーリン・ペドロヒメネス '79】※

   U.D社のザ・ディスティラーズ・エディションの一本。本品はフィニッシュに甘口シェリー・カスクを用う。43度。

   樽由来のソフトなバニラ香で強烈なピート香が抑えられ、柔らかいタンニンと干し葡萄の香りが顕著。タリスカーと共にシリーズ中、屈指の一本。

   ちなみに、オフィシャルのラベルには「歳月は情熱の炎を消し去り、ぬくもりに変える」と著されている。酒も恋愛も同じ論理回路を持つようである。

☆【ラガヴーリン '88 カスク・ストレングス(ハート・ブラザーズ)】

   バーボン・カスクの12年もの、56.2度、2樽の限定品。

   現行のオフィシャルと比してずんと辛口。かくまでスパイシーにしてピーティーなラガヴーリンは珍しい。ハニー香を伴うご機嫌なフィニッシュ。スプリングバンク21年と共に、最も美味なシングル・モルト。強烈な個性と親しむに、能う限りニートかつ常温で嗜んで頂きたい。

☆【ラガヴーリン '88(ムーン・インポート)】

   イン・ザ・ピンクの一本。12年もの、46.0度のシングル・カスク。限定334本と340本など、樽違い数種あり。

   ムーン・インポート社は伊太利亜ジェノバの酒商、専らワインとスピリッツを扱う。今回のコレクションのタイトルはイン・ザ・ピンク。モートラック84年、グレンギリー86年、アベラワー88年、ラフロイグ90年と本品の5種。すべて46度のシングル・カスク。例によって人気筋はラフロイグとラガヴーリンのみ。共に粗さを有す、言い換えれば力強く、ピーティーな味わい。いつもながら、同社のボトル   のコンディションのよさには感心させられる。

 【ラガヴーリン '84(マーレイ・マクデヴィッド)】

   バーボン樽の14年もの、46度のシングル・カスク。

   「歴代オーナーのひとりであったピーター・マッキーは、天才であると同時に幾分パラノイアな性格の持ち主であった。従って、このモルトもまた知的に刺激的なウィスキーであり、ビギナーに飲ませるのは無駄、浪費にしかならない」例によって、M.M社らしい嫌みな解説が付されている。かつてのオフィシャル15年ものを想わせる力強さ。

   他に、エイコーンから同じヴィンテージの14年ものカスク・ストレングスが頒されている。

 【ラガヴーリン '88(ムーン・インポート)】

   10年もの、50度のプリファード・ストレングス、1300本の限定品。

   ムーン・インポート社は伊太利亜ジェノバの輸入業者。高品質のボトルのみ取り扱うことで定評あり、コンピューター・グラフィックを駆使したラベルのユニークさでも識られる。同じ伊太利亜のボトラー、サマローリ社とのジョイント・ボトリング「ドリームス」も頒している。

   低温濾過もカラメルによる色付けもなされていない、謂わば素顔のラガヴーリン。

 【ラフロイグ10年】※

   40度のオフィシャル・ボトル。

   ピーティーで海藻の香りが顕著、好き嫌いがはっきり訣れる。現在なお、フロア・モルティングを行い、テネシー産、特にジャック・ダニエルのバーボン樽を熟成に用いる。ロング・ジョンのキーモルトであり、アイラ・ミストの中核をなすモルト。

 【ラフロイグ10年】※

   43度のオフィシャル・ボトル。旧ボトル。

   現行のオフィシャルは40度だが、両者の差異はアルコール度数に比例した香味の芳醇さ。

 【アイラ・ラフロイグ '90(ブラッカダー)】

   オーク樽の8年もの、43度のシングル・カスク。

   ラベルには「力強く、とてもピーティーでスモーキー、従って、臆病者には相応しくないウィスキー」と著されている。

 【ラフロイグ '90(ケイデンヘッド)】

   オリジナル・コレクションの一本。バーボン・ホグスヘッドの10年もの、46度、限定282本のシングル・カスク。

☆【ラフロイグ '90 カスク・ストレングス(クライズデール)】

   バーボン・バレルの8年もの、59.7度、限定300本のシングル・カスク。

   力強い麦汁の香り。口腔にダイナマイトの訪い。五臓六腑にずしりとくる存在感。ウィスキーとはかくも熾烈なもの。

☆【ラフロイグ '90 カスク・ストレングス(クライズデール)】

   バーボン・カスクの9年もの、59.4度、限定268本のシングル・カスク。

   焼け焦げたヘザー、浜に打ち上げられひからびた海藻、ロープに塗り込められた防腐剤などが醸し出す沃素の臭い。8年ものとは思われぬ、ビッグでパワフルなフィニッシュ。是非ニートかつ常温で味わって頂きたい銘酒。

 【ラフロイグ '90 カスク・ストレングス(イアン・マクロード)】

   ディスティラリー・コレクションの一本。バーボン樽の10年もの、57.2度のシングル・カスク。

   リリースはスコッチ・モルト・セールス社。アンガス・ダンディ社の樽をスコティッシュ・インディペンデント・ディスティラーズ社がボトリング。

   前回のボトリングはロンバード社だったが、今回は樽の供給先が変わった。比してロンバード社のボトルに分がある。オフィシャルよりは美味だが、クライズデール社のボトルにみられる濃厚な麦汁の渋味や香りが浅く、尖った辛味のみ強調されるフィニッシュ。

☆【ラフロイグ '90 カスク・ストレングス(ロンバード)】

   ディスティラリー・コレクションの一本。10年もの、59.1度のシングル・カスク。

   リリースはスコッチ・モルト・セールス社。ロンバード社はグラスゴーのインデペンデント・ボトラー。オフィシャルのカスク・ストレングスと比して、ボディとフレーバーにやや深み、ヨード香に一切の雑味なく、いとど涼やかなきれ。

   同じ90年熟成の10年ものが伊太利亜の酒商ムーン・インポート社からも頒されている。共に最良のコンディション。

☆【ラフロイグ10年 オリジナル・カスク】※

   57.3度、オフィシャルのカスク・ストレングス。

   チャールズ皇太子愛飲の酒。シングル・モルトとして初めてプリンス・オブ・ウェールズ御用達の勅許状を賜る。

   鄙(ひな)びた港町の饐(す)えた臭い、診療所を彷彿させる薬品臭、深いヨード香とピート香。フィニッシュは厚くまろやかで、頗るドライ。

 【ラグ・フロイグ '90 カスク・ストレングス(C.C)】

   9年もの、60.2度。中味はラフロイグ。

   エディンバラの独立瓶詰業者カレドニアン・コネクションズ社のリリース。カレドニアンとは、以前のケルティック・コネクションズ社であり、ブラッカダー社の独逸向けボトルを専門に扱う。前回は79年蒸留の18年ものを頒す。ラベルに鮮やかなケルト模様をあしらい、納得のいく品質のものを選択している。

   他に、同じヴィンテージのカスク違いで45度のボトルも頒されている。

☆【ローダブル '85(ダグラス・レイン)】

   オールド・モルト・カスクの一本。15年もの、50度のプリファード・ストレングスにして、中味はラフロイグ。限定303本のシングル・カスク。他に樽違い数種あり。

   リープフログ同様、生産者の管理外のカスクにして、蒸留所名の使用を拒否されたウィスキー。謂わば脇腹のラフロイグ。オフィシャルの15年ものと比してずんと荒削り、あくが強く、粗野なまでの渋味と口腔を刺激するえぐ味。

   同時頒布にダラス・ドュー31年、タクティカル20年、スペイサイド・アノニムス34年等がある。なお、タクティカルの中味はタリスカー、アノニムスはグレンファークラス。

 【ラフロイグ '83 カスク・ストレングス(マキロップ)】

   マスター・オブ・ワインの称号を持つインデペンデント・ボトラー、イアン・マキロップ社が樽を厳選したマキロップ・チョイスの一本。16年もの、52.1度のシングル・カスク。

   ラフロイグとしてはややマイルドな肌合い。クライズデール社のカスク・ストレングスと飲み比べると一驚を喫する。

☆【ラフロイグ15年】※

   43度のオフィシャル・ボトル。

   10年ものと比して、よりヨード臭やバニラ香を厚くし、後味に鮮烈かつ芳醇な印象を与えている。

   仕込みにはサーネイグ・バーンという小川の水を用いるが、川周辺の土地も蒸留所が所有し、水質保全のために放牧も行わず、自然のままに残している。

   蒸留所のピートベッドから切り出されるピートには、ヘザーだけでなく多量の苔が含まれる。ラフロイグの特異な麦芽の風味の要因である。

 【リープフログ '88(マーレイ・マクデヴィッド)】

   バーボン樽の10年もの、46度のシングル・カスク。中味はラフロイグ。

   マーレイ・マクデヴィッド社が取り扱うボトルの裏ラベルには必ず繰り言が著されている。例えばアードベッグのラベルでは、蒸留所をわが社に売らず、何故グレンモーレンジ社に売却したのかといった類である。ラフロイグも然り、ディスティラリー・コンディション以外のボトルが頒布されるのを嫌がった同社との間に訴訟騒ぎを起こしている。結果、わざとラフロイグのスペルを誤植させ、お茶を濁す始末。かかる生臭さに私などは惹かれるのである。

   他に、87年の12年ものも頒されている。また、同じ87年の12年ものカスク・ストレングスがエイコーンから頒されている。

☆【ラフロイグ '76 カスク・ストレングス(ロンバード)】

   ジュエル・オブ・アイラの一本。22年もの、50度。

   スコッチ・モルト・セールス社のディスティラリー・コレクションの一本でもある。日本人画家の手になる同蒸留所シリーズは、他にタリスカー、ブナハーブン、ブルイックラディ、グレンファークラス、グレンリヴェット、マッカラン、クライヌリッシュ、ブローラ、ローズバンクがある。

   低温濾過もカラメルによる色づけもなされず、ラフロイグのキャラクターが美事に開花。美味の一言。

 【アイラ・ラフロイグ '79(ベリー・ブロス&ラッド)】

   ディステラリー・コンディションの20年もの、43度、2樽の限定品。

   ベリー・ブラザーズ&ラッド社は通称ベリーズ社と呼ばれ、倫敦のセント・ジェームズ街に店を構える、酒類・食料雑貨販売の老舗。ベリーズ・オウン・セレクションが有名だが、伊達男ボー・ブランメル贔屓の店としても夙に識られる。

 【アイラ・ラフロイグ '80 カスク・ストレングス(キングスバリー)】

   ケルティック・コレクションの一本にして、19年もの。50.1度のシングル・カスク。

   バーボン・カスクNo.62。限定126本の126番。当コレクションのラベルはケルト文字によるデザイン。2000年4月のリリースだが、他にグレン・アルビン65年、グレンリヴェット71年、グレンタレット65年、モストウィ76年がある。なお、同コレクションのセカンド・ボトルはバリンダロッホ(グレンファークラス)65年、タムドゥー66年、グレンカダム71年、ブレア・アソール75年、アードベッグ73年、アードベッグ74年の6本。

 【ラフロイグ '76 カスク・ストレングス(キングスバリー)】

   リフィール・シェリー樽の22年もの、50.4度のシングル・カスク。

   ラフロイグはディステラリー・コンディション以外のモルトにラフロイグの名を冠するのを嫌う。即ち、他処で熟成させたものや業者間のモルトの売買を拒否する。しかし、瓶詰業者の扱うボトル、それもディステラリー・コンディションでないモルトに美味なものが多い。樽買いを認めないのはメーカーのブランドに対する自信の表明なのだが、インデペンデント・ボトルの存在はラフロイグの酒質、要は足腰の強さを結果として示唆している。

 【ラフロイグ30年】※

   43度のオフィシャル・ボトル。

   ポート・エレンから東へ3キロ、潮と海藻の香りに包まれた入江の岩礁に迫(せ)り出すように蒸留所は在る。モルトの巨星に相応しくアイラで最も美しい白亜の建物である。

   ウィスキーもここまで来れば、一切の衒(てら)いがなくなる。含羞を湛えたまっとうなモルトの古層、透き通るような弧絶感。歳月は贅を刮(こそ)げ、斯くもスタティックなウィスキーを醸し出す。

 

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