☆は店主お薦め、※はオフィシャル・ボトルもしくは蒸留所元詰の意で用いました。

☆【ヴィンテージ・キャンベルタウン・モルト(シグナトリー)】

   シグナトリー社が7年もののグレン・スコシアを瓶詰め。40度。

   熟成が若いわりにこくがあり、バランスよく滑らか。カラメルのようにスイートで膨よかな味わい。飲みやすく、心地よい甘味が後口に残る。

   ヴィンテージ・モルト・シリーズでは他に、マル(レダイク5年)、オークニー(ハイランド・パーク6年)、ローランド(オーヘントッシャン5年)、ハイランド(ロングモーン8年)、アイラ、アイラ・カスク・ストレングス(共にラガヴーリン5年)の計7種が頒されている。

 【グレン・スコシア '90(G.M)】

   マクファイルズ・コレクションの一本。9年もの、40度。

   94年に操業中止、それ以来、初めてのボトリング。蒸留所は前世紀末にロッホ・ローモンド・ディスティラリーが買収。スプリングバンクと共にキャンベルタウンに残された僅か二つの蒸留所の一つだったが、スプリングバンクの援助を得て、操業も再開。マル・オブ・キンタイアの伝統であるオイリーにして塩辛い飲み口のモルト・ウィスキーが救われた。

☆【グレン・スコシア14年】※

   40度のオフィシャル・ボトル。

   特徴のないラベルと月並なブランドで損をしているが、一本筋の通った貴重な味わいと絶妙のバランスを内に秘めたモルト。陽にかざすと骨まで透ける干鰈のごときデリケートなこく、フレッシュな味わい。スプリングバンクの持つ押しの強さはな   いが、微かなスモーキー・フレーバーと芯のある甘味が心地よい余韻をもたらす。

 【スプリングバンク10年】※

   2000年春に登場したファースト・エディション。46度。

   12年とは全く異なり、シェリー香と甘味は抑えられ、替わりに僅かな塩味。C.Vにより近い味わい。スプリングバンク蒸留所はアイラ産のピートを用いる。その特質   が活かされたオフィシャル・ボトル。

 【スプリングバンク(C.V)】※

   46度のオフィシャル・ボトル。

   個性的な甘さと深みのあるこくを控え目に、スプリングバンクのいまひとつの個性“Briny”(塩辛い)を強調。

   間違いなく、スプリングバンクの稟質にもっとも近いモルト・ウィスキーである。もともと同社は多面的な商品構成を社是とする。本品が蒸留所の顔として位置づけられるのを嫌ったのか、敢えなく絶版。実験品としてコレクター・アイテムの仲間入りを果たした。

 【スプリングバンク '93 カスク・ストレングス(クライズデール)】

   5年もの、61.3度、限定350本のシングル・カスク。

   キャラメルのように甘く膨よかな香りを持つが、ボディはドライにして骨太。バランスときれの良さは他の追随を許さない。

 【スプリングバンク '93 カスク・ストレングス(クライズデール)】

   上記と同一のインデペンデント・ボトルだが、樽が異なる。本品は6年もの、60.6度、限定290本のシングル・カスク。

   仄かに甘草とマッシュの青臭い香り、クリーミーなピート香に菫のキャラクター。上記と比して、舌触りが幾分スムース、僅かに粘りを感じさせる。

 【スプリングバンク '91 カスク・ストレングス(ロンバード)】

   ジュエル・オブ・キャンベルタウンの一本。オーク樽の8年もの、58.5度。

   「チャームにしてエレガント、バランスのよいモルト」同社のラベルに著される讃辞は常に月並。同社はモーターサイクルやヨットのレースで識られるマン島で生まれたインデペンデント・ボトラー。主にジュエル・コレクションと題して頒されて   いる。

 【スプリングバンク '90(ブラッカダー)】

   オーク樽の9年ものにして、43度のシングル・カスク。

   ビター・チョコの甘味と塩味のバランス、ファイン・ピーティーな香りが売り。

 【スプリングバンク'91(マーレイ・マクデヴィッド)】

   リフィール・シェリー樽の8年もの、46度のシングル・カスク。

   他にバーボン・カスクを熟成に用いた89年蒸留のの9年ものがM.M社から、同じバーボン・カスクの91年蒸留の9年ものがマッキンタイア社から頒されている。

 【スプリングバンク '90(キングスバリー)】

   リフィール・バーボン樽の8年もの、46度のシングル・カスク。

   ちなみに、80年代にはオフィシャルにて8年、10年が頒されていたが、その白ラベルの8年ものは作家コリン・ウイルソンの愛飲するところ。

 【スプリングバンク '87 カスク・ストレングス(ケイデンヘッド)】

   オーセンティック・コレクションの一本。バーボン・ホグスヘッドの12年もの、57.2度、限定300本のシングル・カスク。

   ケイデンヘッド社はインデペンデント・ボトラーの雄。同社が買い蒐めた各蒸留所のウィスキーはスプリングバンクの設備を用いて熟成、瓶詰めされる。

 【スプリングバンク '90 カスク・ストレングス(ブラッカダー)】

   オーク樽の9年もの、57.9度のシングル・カスク。

   キャンベルタウンで唯一操業を続ける蒸留所である。去りゆくもの、失われゆくものに対する愛惜もさることながら、光彩陸離たる味わいは人をして熱狂させる。かつての稠密な喉ごしは薄らいだが、その分きれは佳くなった。これも惚れた欲目か。

 【スプリングバンク '91(キングスバリー)】

   バルデスピノ社のドン・ゴンゾーロ・オロロソ・シェリー樽を用いた8年もの、46度のシングル・カスク。

   8年もののシェリー・カスクは稀少。些か珍妙なバンクだが、話の種にはなる。

   バルデスピノ社はマルケス・デル・レアル・テソーロ社やエミーリオ・ルスタウ社と共に最も秀れたシェリー酒専門メーカー。デル・カラスカル・パロ・コルタードやアモンティリャード・コリセオは夙に識られる。2000年4月リリースの本シリー   ズには、他にリンクウッド90年とクライヌリッシュ90年の2種がある。

 【スプリングバンク '89(マーレイ・マクデヴィッド)】

   バーボン樽の9年もの、46度のシングル・カスク。

   バンクの醍醐味は香り。オフィシャル・ボトルと比して、本品はその香りの優雅さと複雑さにおいて些か見劣りする。ただし、香りの抑制によって、モルト本体は頗る上品な仕上がり。甘味が絡まらず、喉ごしはスムース。

   他にリフィール・シェリー・カスクを熟成に用いた91年の8年ものも頒されている。

☆【スプリングバンク12年(緑マーク)】※

   シェリー樽熟成、46度のオフィシャル・ボトル。

   オフィシャルの12年と21年にみられる馥郁たる甘味は熟成に用いられるダーク・シェリー樽由来のもの。素顔のスプリングバンクはマル島やアイラ島のモルトの如く、オイリーなテキスチャー、ヨード香、塩辛さ等のキャラクターを内包する。決して口当たりのよいウィスキーではなく、強烈なパワーと複雑な香味を併せ持つ、類い稀なウィスキーなのである。タリスカー・アモロソを持ち出すまでもなく、スプリングバンクのような辛口かつシャープな酒質にこそ、シェリー樽が相応しい。

   ただし、ロイヤル・ロッホナガー・リザーヴ同様、本品も熟成に必要な樽の確保が困難になり、現在ではボトリングされていない。

 【スプリングバンク12年(赤マーク)】※

   シェリー樽熟成、46度のオフィシャル・ボトル。

   既に絶版のオフィシャル・ボトル。赤マークが先行の正規品。緑マークの方がシェリー香がやや強いといわれるが、マッカラン12年の正規品と並行品ほどの差違は感じられない。

   83年のタイムズ紙主催の品評会で、並みいる強豪を抑えて第1位に入賞、さらに評論家マイケル・ジャクソンが銘柄の採点と同時に行う5段階の評価ではマッカラン、ラガヴーリン、ハイランド・パークと共に、最高点の5つ星を獲得。 「モルトの香水」と謳われ、その人気、実力は他の追随を許さない。

 【スプリングバンク '80 カスク・ストレングス(ケイデンヘッド゙)】

   オーセンティック・コレクションの一本。シェリー樽熟成の18年もの、53.4度、限定582本のシングル・カスク。

   後口に渋味を齎すほどの甘く濃厚なシェリー香、弥増(いやま)さるオイリーな喉ごし。他のスプリングバンクと比して荒々しいまでのパワーを秘める。

☆【スプリングバンク21年】※

   シェリー樽熟成、46度のオフィシャル・ボトル。

   オイリーでシルクのような舌触りを持つ逸品。グラスに注いだだけで、馥郁(ふくいく)たる香りが部屋中に充満する。

   清漣な塩味、ふくよかな甘味、芳(かんば)しくも繊細なこく、絶妙のハーモニー。甘辛のバランスのよさは特筆もの。したたかな存在感のあるフィニッシュ。

   同じ21年ものではシグナトリー社とケイデンヘッド社のカスク・ストレングスがあるが、前者の方が美味。

☆【スプリングバンク25年】※

   既に絶版のオフィシャル・ボトルにして、46度。

   ボトリングは下記のロンバードと同時期、もしくはその前年と想われる。数あるスプリングバンクの中でもオイリーなテクキスチャーを持つ。際立って檻が多く、濃厚な味わい、シェリー樽熟成の21年ものとは全く異なる香味だが、間違いなく本品も傑作。

   2001年に300本限定頒布された「キャンベルタウン300周年記念ボトル」はスプリングバンク25年ものが90パーセント含まれたブレンデッド・ウィスキー。

 【スプリングバンク '67 シェリー・カスク(ケイデンヘッド)】

   シェリー樽熟成の32年もの、44.6度、限定228本のシングル・カスク。

   ケイデンヘッド社はスプリングバンクと同資本。従って、ケイデンヘッド社の頒するスプリングバンクはディステラリー・コレクションと同一の環境にある。謂わば、準オフィシャルとでも称すべき一本。他にも多種多様なボトルがある。

 【スプリングバンク '67 カスク・ストレングス(シグナトリー)】

   オーク樽の32年もの、49.1度、限定225本のシングル・カスク。

   大西洋に突き出たキンタイア半島の先端に位置するのがキャンベルタウン。今世紀初頭には32の蒸留所が在ったが、現在操業中はスプリングバンクのみ。

   同じ67年では、ラ・リザーヴ社からバーボン・カスクの31年ものが、ブラッカダー社から30年ものカスク・ストレングスが頒されている。

 【スプリングバンク '65(ハート・ブラザーズ)】

   95年の瓶詰めにして30年もの、43度。

   同じ65年では、マーレイ・マクデヴィッド社の他、ダグラス・レイン社から34年ものが、ロンバード社からは31年ものが頒されている。ただし、ロンバードのボトルは下記の25年ものの方が美味。

 【スプリングバンク '65(ロンバード)】

   オーク・カスクの25年もの、46度、4樽のリミテッド・エディション。

   15年以上の熟成モルトを対象にした、ザ・ロンバード・コレクションの第1回目。 限定頒布が90年であり、また人気のあるモルトなので、現在では入手が難しくなった。

 【スプリング・バンク '65(ザ・ボトラーズ)】

   96年の瓶詰めにして31年もの、42.7度のシングル・カスク。

   ピート香の乗りがよく、柑橘系のシトラスのキャラクター。フィニッシュは絶品。

 【スプリングバンク '65(L.G)】

   熟成に用いた樽はリフィール・シェリー・ホグスヘッド。35年もの、46度のシングル・カスク。

   下記と比して、やや間の抜けた味わい。シェリー・カスクとアルコール度数の相関関係はむずかしく、本品の甘味には些かの緊張感もない。

   ロンバード社の樽をリキッド・ゴールド社がリリース。カレドニアン・セレクションの第二弾。リキッド・ゴールド社は現時点でもっとも新しいインデペンデント・ボトラーだが、ロンバード社とのパイプが太く、クライヌリッシュの28年もの等、コレクションは頗るユニーク。

☆【スプリングバンク '69 カスク・ストレングス(シグナトリー)】

   28年ものにして52.3度、限定590本のシングル・カスク。

   特に69年のシェリー樽熟成は大当たり、香りとこくの深さに於いてこのクラス随一と評される。ウエスト・ハイランドを凌ぐ、鮮烈な味わい。

   天鵞絨(ビロード)のような鮮やかな喉ごし、寄せては返すさざれなみのごときフィニッシュ、嬋娟(まぐわ)しの稀世のモルトウィスキー。

☆【スプリングバンク30年】※

   オーク・カスク、46度のオフィシャル・ボトル。

   スコットランドでは数少ない独立資本の蒸留所。グレンフィディックとロッホサイド以外でボトリング設備を有するのはスプリングバンクのみ。瓶詰設備を併せ持つ利点は、熟成を済ませた樽の中のウィスキーの度数を落とす割水に仕込みと同一の水を用いられることにある。

   最上のカルヴァドスにも似た甘く深い香り、スリリングなまでに美味なモルト。

   同じ30年ものでは、ジョン・ミルロイ社のカスク・ストレングス50度も美味。

 【スプリングバンク '66 カスク・ストレングス】※

   バーボン・カスクの32年もの、54.4度のリミテッド・エディション。

   キャンベルタウンのオーガニックの大麦を原料に、同地で採られたピートで乾燥。マッシュに用いる水は当然として、蒸留釜の加熱にも地元産の石炭を使用、すべての原材料を蒸留所の8マイル以内で調達。唯一の例外は熟成に用いるバーボン樽という、こだわりのローカル・バレー。他にウエスト・ハイランドと名付けられたシェリー・カスクのものもある。

   同じ66年では、サマローリ社の21年ものも美味。伊太利亜の酒商の話が出た序でに、ムーン・インポート社から頒された85年のカスク・ストレングスも結構いけます。

☆【ロングロウ10年】※

   スプリングバンクのセカンドラベルにして46度。オーク・カスク。

   特質は麦芽の乾燥にピートのみを用いる点。バンクの6時間に対して、55時間もピートを焚くといわれる。

   湿った草や土の匂い、微かにシェリーの甘味、長くピーティーなフィニッシュ。塩辛く、口腔が沸き立つようなオイリーな後口。通好みのヘビーなモルト。

   1973年から74年にかけて蒸留、85年より発売。ブランドはスプリングバンク蒸留所に隣接していた蒸留所の名。同蒸留所は1896年に閉鎖され、現在ではスプリングバンク蒸留所の瓶詰工場になっている。90年以降、年毎の生産量は増え、2000年からは定期的にボトリング。現在では安定供給されるようになった。今後、大幅な値下がりが期待できそう。

   73年、74年の元詰めブルー・ボックスを始め、サマローリ社の16年、21年もの、マーレイ・マクデヴィッド社の90年、91年等、様々なボトルが頒されている。

 【ロングロウ10年】※

   上記のシェリー・カスクにして、46度。

   生産量が少なく、つい先頃までほとんど入手不可能だった。ただし、80年のケイデンヘッド社のスプリングバンク同様、息詰まるようなヘビーな酒質。モルトに隙がなく、味わうというよりは、酒に飲み手が振り回される。従って、ロングロウのピーティーなフィーリングを愉しむのにシェリー・カスクは不向き。

 

 

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