「田中隆尚先生の痛恨事」について
(2007-03-28 21:03:02) by   


 「田中隆尚先生の痛恨事」はももんが平成十六年二月号田中隆尚追悼号に掲げられた。文中で触れられているK氏の許可を得てこちらへ転載させていただいた。
 K氏は肥田浩三さんや中野三敏さんと共に書誌学をよくする江戸学の泰斗であり、私にとっても知音を得たのは古く、二十歳にまでさかのぼる。一方、文中のO書店とH氏とも私は交流があった。従って、事情のあらかたは存じ上げている。「取次店T社に出版部数を偽って申告した」とあるのは納品部数の間違いかと思う。T社は管理ミスが露見するのを惧れて密かにペナルティを科したのである。O書店、T社共に社内に友人がい、さまざまな資料や書面が拙宅にも送られてきた。
 出版人には金銭面でいい加減なひとが多い。そこは著者と似ていて、彼等を相手に道徳を説くのは時間の浪費になる。H氏に限らず、出版人と政治家が成功するかいなかは、有力な金蔓を掴むかどうかにかかっている。利用できればよろしいが、利用されれば腹が立つ。なけなしの二百万円をH氏に掠め取られたK氏にしてみれば怒り心頭に発するのであろう。やっちゃんなら知己の金を横領したとか因縁を付けてそれを越える金数を巻き上げるところだが、いまの私は八九三者ではない。
 そのH氏が近ごろ立て続けに著書を上梓している。日経新聞の文壇往来や藝文往来にも書評が掲げられた。内情を知る者には書評それ自体が噴飯ものなのだが、いきさつを知らないのであれば非難はあたらない。ひとは死ぬが本は残るなどと書けばK氏の怒りに油を注ぐことになろう。しかしながら、H氏が少しずつ「作家の風貌」を持ってきたとするなら、以降の喧嘩は文字でするしかない。私なら殴り飛ばすのだが、そうした覇気の持ち合わせがK氏にあるとも思われない。当掲示板への「田中隆尚先生の痛恨事」の転載を契機に諦めていただくとしようか。


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