魚卵再訪
(2007-11-10 15:12:44) by   


 河崎徹さんと勝井隆則さんからイワナの魚卵が送られてきた。「年寄り向きの薄味にしましたので一週間ぐらいで食べてください。お宅の店に来るイヤな客に沢山食べさせてください(コレステロール値が多くなる)」との添え状あり、「年寄り向き」には丁寧にアンダーラインが引かれている。河崎さんらしい悪意の一端が垣間見られて頬笑ましい。石川の友の変わらぬ高誼に厚い感謝を申し上げる。
 「青息、吐息、風の息、夢裡のですぺらへ恒例の供物です」とは勝井さんこと金沢落魄小僧の弁。事常に頓挫して失望落魄を繰り返す日々への、これはさらなるだめ押しである。
 さるにても、落魄とか零落ほど麗しい言葉があろうか。一刻一刻、滅びが近づいてくる。存在は新陳代謝と口にする時の沙を食むような寂しさ、そして口に残る味気ない異物感。目には視て手には取られぬその距離、その失意にいとおしさを覚える。
 白居易に「門前冷落鞍馬稀」とある。客を鞍馬に見立てればですぺらの光景が顕れる。さて、イワナ好きの鞍馬にはこの一週間がチャンスである。酔いなくて、魚卵がなくていかに生きられようか。


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