予想外の貴腐ワインに始まり、モルトを飲みつつ一考さんの縦横無尽なお話を楽しんでいるうち、あっという間に過ぎた5時間余でした。これが最後と思うと去りがたく、すっかり晩くなってしまったことをお詫びします。いただいた幾多の美酒のなかでも、やはりSMSのタリスカー1979はとびきり旨く、永らく記憶に残るボトルとなりそうです。
思えば今回はですぺら閉店を知って、矢も盾もたまらず明石再訪を決めたものです。また突然のお願いにもかかわらず、吉岡実の詩稿「来てみれば秋〜」を見せてくださり、本当にありがとうございました。赤坂ですぺらへ行くたびに見惚れていたものですが、当時撮った写真をいつしか失くしてしまい、何とかもう一度目にしたいと希っていました。奇しくも初秋の訪問となった今回、改めて撮らせていただいた写真は大切にするつもりです。
実は翌朝も明石で下車し、「ですぺら」の佇まいを目に焼き付けました。続いて向かった神戸では、前回行かれなかったG線〜にしむら珈琲店を巡りました。あいにく終日の雨でしたが、いきおい耕衣句「コーヒ店永遠にあり秋の雨」を、ひいては一考さんが銀花に寄稿された「括弧で括られた〈引用〉への旅」を想起しつつの町歩きとなりました。
あまり感傷的になることのない私ですが、今回のですぺら詣ではどこか切ない旅の時間となりました。赤坂時代を含め微々たる回数ながら、一考さんのお話を伺いながら飲む酒は本当に愉しいものでした。酒や書物について教えていただいたことは数知れず、得がたい時間だったと思います。ですぺらの灯が消えるのは本当に残念ですが、今後も掲示板でご謦咳に接します。
追伸:名残惜しさゆえか、お店の椅子(奥から2番目の席?)に扇子を忘れてきたようです。使っていただいても構わないのですが、いずれまたヤフオクで落札させていただく機会もあろうかと思いますので、ご不要であればその際に同梱をお願いできますでしょうか。
なお持ち帰ったボディントンエール〜チリのカベルネ1985も早速いただきました。前者はクリーミーながらも雑味のないほろ苦さ、後者はカシスジャムの如き芳醇な風味を篤と堪能しました。帰宅後も続く美酒の教えに、重ねてお礼を申し上げます。