●ですぺらモルト会十月
トバモリー(10年)※ アイランズ
40度のディスティラリー・ボトル。
アイラやスカイ島のタリスカーに似たヨード臭や塩辛さが特徴。スピリッティな味わい、スパイシーかつドライなフィニッシュ。他にリミテッド・エディションの創業200年記念ボトルが入手可能。
トバモリー蒸留所はもうひとつのモルトを醸しており、それが下段のレダイグである。
レダイグ('90 ゴードン&マクファイル)アイランズ
コニッサーズ・チョイスの8年もの、40度。
81年から90年までの操業休止の後、久しぶりに再開されたモルト。
樽香が強く、若草や繊細な柑橘系の香り。スイート、ペパリー、スモーキーなキャラクター。熟成期間の割にピート香が深く、芯の太さ、骨格の厚みを感じさせる。フィニッシュはドライからスイートに、力強く名状し難い余韻。
マル島が生んだ銘酒であり、有無を言わせぬモルトの最高峰として君臨する。現地ではゲール語読みでレチョックと発音。
タリスカーに似たスピリッティな味わいは、島嶼、海角、海嘯を想い起こさせる。オイリーにしてピーティー、ミントを想わせる甘味を伴ったフィニッシュは絶品。
ディスティラリー・ボトルでは74年、79年のヴィンテージもの、15年、20年ものエイジング・ボトル、ミレニアム記念のシェリー、若いモルトのピートなどが頒布されている。
ボトラーではケルティック・コネクションズ社とクライズデール社からカスク・ストレングスが、ブラックアダー社から加水タイプがボトリングされている。
グレン・エルギン(12年)※ スペイサイド
43度のディスティラリー・ボトル。
ディスティラリー・ボトルは12年ものだったが、先頃、デザインを一新、熟成年の表示がなくなった。下って2002年初頭、オスロスク、ストラスミル、グレン・スペイと共にユナイテッド・ディスティラーズ社の花と動物シリーズにも加えられた。現在ではユナイテッド・ディスティラーズ社のヒドゥン・モルト・シリーズにも加えられチョイスの幅が拡がった。ホワイト・ホースの核をなす原酒モルト。
ソフトでスムース、やや軟弱な酒質。青草の香り、加水によりヘザー・ハニーの甘味。ビギナー向け。
アデルフィ社、カレドニアン・コネクションズ社、ケイデンヘッド社、ボトラーズ社からカスク・ストレングスが、ダグラス・レイン社とロンバード社からプリファード・ストレングスが、ゴードン&マクファイル社、ハート・ブラザーズ社、ブラックアダー社からは加水タイプがボトリングされている。
グレンダラン('85 ダグラス・マクギボン)スペイサイド
プロヴァナンスの一本。15年もの、43度。
軽く焼いたプリン、クリーム・ブリュレを思わせる香り。口当たりは軽いが、けれんみがなく、モートラックから厚みを取ったような味わい。アベラワーと共に万人受けする上質なモルト。
オールド・パーの原酒モルト。ディスティラリー・ボトルでは8年、12年ものがある。しかし、フルーティーな香りは本品が上。 ケイデンヘッド社とダグラス・レイン社からカスク・ストレングスが、キングスバリー社とユナイテッド・ディスティラーズ社からはカスク・ストレングスと加水タイプがボトリングされている。
スペイバーン('90 ダグラス・レイン)スペイサイド
オールド・モルト・カスクの一本。10年もの、50度のプリファード・ストレングス。434本のリミテッド・エディション。
シャープな辛口だが、わずかにヘザーの香り。フィニッシュは短いが、いくぶんスイート。飽きのこない食前酒。
ディスティラリー・ボトルには10年ものと21年ものカスク・ストレングスがある。
インデペンデント・ボトラーではゴードン&マクファイル社、ダグラス・マクギボン社、ユナイテッド・ディスティラーズ社から加水タイプがボトリングされている。
ダラス・ドゥー('79 ゴードン&マクファイル)スペイサイド
19年もの、40度。
蒸留所は1983年に閉鎖され、1992年にライセンスは取り消された。過去のストックが少量、インデペンデント・ボトラーから頒布されているのみ。
潤いを含んだ樽、雨降りの製材所の臭い。雨に打たれた整髪料を想わせる超個性的な味わい。
ディスティラリー・ボトルでは83年蒸留、48度のザ・ラスト・カスクと23年もの、40度のゴールデン・ジュビリー(エリザベス女王即位50周年記念)が入手可能。
他ではイアン・マキロップ社とユナイテッド・ディスティラーズ社からカスク・ストレングスが、ダグラス・レイン社からプリファード・ストレングスが、ゴードン&マクファイル社、ヴィンテージ・モルト社、マーレイ・マクデヴィッド社から加水タイプがボトリングされている。
オーバン('78 キングスバリー)ハイランド
オーク・ホグスヘッドの19年もの、46度、シングル・カスク。
ハイランドとアイラの中間の性質。華やかさには欠けるが、時代に追従しないクラシックな味わい。ハイランドに聳(そばだ)つ銘酒のひとつ。
完熟した西洋梨の香り、ヘザーのキャラクター。昔日のアードベッグを想わせるスモーキー・フレーバー。ピーティーな潮の香とスムースなフィニッシュ。
ディスティラリー・ボトルと比して、引き締まるようなソルティーな味わい、スモーキー・フレーバーとフィニッシュのビター・チョコの香りが顕著。
ディスティラリー・ボトルはユナイテッド・ディスティラーズ社のクラシック・モルト・シリーズだが、他にフィニッシュに辛口シェリー・カスクを用いたダブル・マチュアードと69年蒸留のニュー・カスク・ストレングスがある。ボトラーではダグラス・レイン社の78年蒸留の20年ものプリファード・ストレングスがある。
グレンユーリー・ロイヤル('76 ゴードン&マクファイル)ハイランド
コニッサーズ・チョイスの21年もの、40度。
アーモンドの香りに、蜂蜜、ピスタチオ、アンゼリカ、ミントの味わい。ライト・ボディだが、酒質は堅く、しっかりしている。緑葉もしくは樹皮を噛んだようなフィニッシュは長く、シナモンの華やかな芳香が残る。
アロマティックなウィスキーを代表する、東ハイランドの隠れた美酒。1985年に蒸留所は閉鎖、ライセンスは92年に取り下げられた。
ヴィンテージ・モルト社から加水タイプが、ケイデンヘッド社、シグナトリー社、ダグラス・レイン社、ユナイテッド・ディスティラーズ社のレアモルトからカスク・ストレングスが頒布されている。とりわけ28年もの、58.4度のレアモルトはオロロソ・シェリーのアロマが顕著。
トマーチン('77 ヴィンテージ・モルト)ハイランド
ヴィンテージ・モルト社のクーパーズ・チョイスの一本。オーク・カスクの22年もの、43度。
スコットランド最大級の生産規模を持ち、日本企業が所有した最初の蒸留所。ディスティラリー・ボトルとして10年ものが出回る。ドライでスパイシーな酒質だが、バランスに些かの難点あり。
ウィバーズ・ウィスキー・ワールド社、ウィスク・イー社の土屋守コレクション、シグナトリー社、ダンカン・テイラー社、ブラックアダー社、ブルームスバリー社、ムーン・インポート社、リキッド・ゴールド社からカスク・ストレングスが、ダグラス・レイン社からプリファード・ストレングスが、ケイデンヘッド社、ゴードン&マクファイル社、ヴァン・ウィー社からは加水タイプがボトリングされている。
ブレア・アソール('85 イアン・マキロップ)★ ハイランド
マキロップ・チョイスの一本。14年もの、61.1度のカスク・ストレングス。
バースシャーの保養地、ビトロッホリー周辺の蒸留所としては、他にアバフェルディとエドラダワーがある。その中ではもっとも若く、フレッシュなライト・ボディ。香りは稀薄で、ベルの原酒モルトに用いられる。
ディスティラリー・ボトルでは8年ものがあったがまったく見掛けなくなった。200周年記念の18年ものカスク・ストレングスはかろうじて入手可能。現在ではユナイテッド・ディスティラーズ社の花と動物シリーズとレアモルトが出回っている。
キングスバリー社、ケイデンヘッド社、ダグラス・レイン社、イアン・マキロップ社、ムーン・インポート社からカスク・ストレングスがボトリングされている。