●ですぺらモルト会一月

 

アイル・オブ・ジュラ('99 パシフィック・カレドニアン)アイランズ

 3年もの、60.7度のカスク・ストレングス。447本のリミテッド・エディション。
 ジュラ蒸留所のマスターブレンダーのリチャード・パタースンと同蒸留所長マイクル・ヘッズ両氏によるボトリング。ディスティラリー・コンディションだが、従来のエディションと異なり強烈にピートを焚いている。オフィシャルはライト・ボディの甘口だが、本品はレ ダイグ15年ものを想起させる強いピート香、パワフルでスモーキーなフィニッシュを有す。
 上記ヘヴィリー・ピーテッド・ウィスキーと13〜20年、21年以上のジュラのヴァテッド・モルトが「スーパーステーション」とのブランドで2002年、2003年にボトリングされた。シェリー・バット・フィニッシュの欧州向けリミテッド・エディションである。どうやら、ジュラ蒸留所はイメージ・チェンジをはかっているようである。フロア・モルティングをはじめたとも聞く、これからが楽しみである。

カリラ('91 ドナート)アイラ

 ダン・イーディアンの一本。10年もの、46度。5樽、1790本のリミテッド・エディション。
 ドナート社はイタリアのジェノヴァの酒商。ダン・イーディアンとのコレクションを頒す。ダン・イーディアンとはスコットランドの古都エディンバラのケルト語読み。オスロスク12年、同カスク・ストレングス、カリラ10年、ボウモア9年、マッカラン11年等が当初ボトリングされた。カスク・ストレングス以外はすべて46度のシングル・カスク。無着色、低温濾過は施されていない。適度に澱もあり、コンディションは良好、かつコスト・パフォーマンスに勝れる。

インチガワー('89 ベニーヴァ)スペイサイド

 バーボン・カスクの12年もの、60.2度のカスク・ストレングス。
 セント・アンドリューズのベニーヴァ社によるはじめてのカスク・ストレングス。同時頒布にグレン・グラント77年蒸留の24年ものとダフタウン85年蒸留の17年ものがあり、すべてバーボン・カスク。
 藷焼酎や柿渋を想わせる独特の癖を持つ食後酒だが、本品は珍しくまとまりのよい香味を持つ。溶かしたバターの甘くスムースな香り、仄かに珈琲の香り、ディスティラリー・エディションより若いが味わいはこちらの方が雑味が少なくリッチ。

インペリアル('89 ダグラス・マクギボン)スペイサイド

 プロヴァナンスの一本。11年もの、43度。
 きれのよい辛口だが、アルコール臭と些か単調な味わい。カードゥと共にスペイサイドの入門編として適す。
 ダルユーインの第二蒸留所として建てられたが、1897年の創業以来、操業と休眠の繰り返しで、休業期間の方が長かったといわれる。すべてがブレンド用で、ディスティラリー・エディションはなく、ゴードン&マクファイル社のボトル数種が出回るのみ。

クレイゲラヒ('89 ダグラス・レイン)スペイサイド

 オールド・モルト・カスクの一本。12年もの、50.0度のプリファード・ストレングス。360本のシングル・カスク。
 蒸留所の創設は1888年。株主のひとりピーター・マッケイが1890年にブレンデッド・ウィスキーのホワイト・ホースを発売。爾来ホワイト・ホースのメイン原酒となり、シングル・モルトとして出回る量は極めて少ない。
 ディスティラリー・ボトルはユナイテッド・ディスティラーズ社の花と動物シリーズだが、それと比して遙かにリッチ。アイリッシュ・クリームの香り、オレンジやナッツの風味、長く濃密なフィニッシュ。最良の食後酒のひとつ。
 イアン・マクロード社、ハート・ブラザーズ社、シグナトリー社、ゴードン&マクファイル社、サマローリ社などから加水タイプのボトルが頒布されている。また、ボトラーズ社、イアン・マキロップ社、ユナイテッド・ディスティラーズ社のレアモルトからカスク・ストレングスが頒布されている。

グレン・キース('76 ジェームズ・マッカーサー)スペイサイド

 スコッチ・ウィスキー500周年記念ボトル。22年もの、51.2度のカスク・ストレングス。
 グレン・キースはシーグラムの原酒のため、ほとんど樽売りされず、ゴードン&マクファイル社以外の独立瓶詰業者のボトルは珍しい。完熟林檎や西洋梨のアロマが強く、ドライかつシャープなきれを持った佳酒。火にかけられた鼈甲飴の芳ばしさを持つ。
 ストラスアイラの第二蒸留所として1957年に誕生。すべてがシーグラムの原酒に回されるため、ディスティラリー・エディションは一度も頒布されなかったが、94年から10年ものがオフィシャル・ボトルとして頒されるようになった。

コールバーン('80 ダグラス・レイン)スペイサイド

 オールド・モルト・カスクの一本。シェリー・カスクの20年もの、50度のプリファード・ストレングス。648本のリミテッド・エディション。
 飲み口は軽く、フレッシュだが、輪ゴムを噛みしだくような頗る個性的な味わい。85年に閉鎖され、92年にライセンスを返上。今後再会される予定なし。

グレン・オード(12年)※ ハイランド

 ユナイテッド・ディスティラーズのボトリングになるディスティラリー・エディション、43度。
 麦芽の風味とかすかなシェリー香、飲み口はほどほどのドライ、軽い苦みを伴ったフィニッシュ。ハイランドの典型的な食後酒にして、デュワーズの主要モルト。
 1968年に大型のドラム式モルト製造棟が建てられ、スコットランド北部の多くの蒸留所に大麦モルトを供給している。
 グレン・オードはグレン・モーレンジ同様、一切の樽売りはしていない。従って、インデペンデント・ボトラーのボトルは頒されていない。

グレンモーレンジ(10年)※ ハイランド

 43度のディスティラリー・エディション。
 スコットランドでもっとも親しまれているシングル・モルト。仕込みにはミネラル分を多く含む硬水を用う。良質の軟水に限られるとの定説を覆し、蠱惑(こわく)に充ちたモルトを拵(こしら)えている。熟成はバーボン樽。
 蜂蜜、木の実、桂皮、白檀等のささめごと。食用花を食むようなスパイシーな甘味。口腔に拡がる刺激的なフィニッシュはドライからスイートに。
 軽く華やかでデリケートな香りが特徴。すべてをシングル・モルトとして出荷。現在、一切の樽売りはしていない。熟成はすべてバーボン樽だが、原木をアメリカのミズーリ州で買い付け、一度ケンタッキー・バーボンを詰めた樽のみを用う。

ミルバーン('72 ゴードン&マクファイル)ハイランド

 コニッサーズ・チョイスの22年もの、40度。
 北ハイランドの中心地であり、ネス湖の畔、インヴァネスの蒸留所。オフィシャルが頒布されないまま、1985年に閉鎖、4年後にはレストラン兼パブに改装。近い将来、飲めなくなるモルト。