●ですぺらモルト会十一月

 

ラガヴーリン(クラシック・オブ・アイラ) (ヴィンテージ・モルト)アイラ

 クラシック・セレクションの一本。オーク樽熟成、58度のカスク・ストレングス。二樽のリミテッド・エディション。
 ヴィンテージ・モルト社のボトリングになるノン・エイジ。リリースはスコッチ・モルト・セールス社。同様のセレクションにアイランド・クラシック(タリスカー)がある。
 毎年カスクが変わるので定かではないが、8年から10年ものと思われる。愕くほどパワフルで刺激的。ディスティラリー・エディションと比して、ヨードとピートの香りが著しい。本品は2000年のボトリング。
 重厚かつなめらか、ベルベットのような味わい。焦げたヘザー、強いピート香、潮、海風、海藻の香り等、一度飲んだら病みつきになる銘酒中の銘酒。強烈な個性を包むエレガントなこくとシェリー酒の妙なる甘味。フィニッシュはパワフルでスモーキー。愛惜措く能わざる逸品。

ダルユーイン('71 ゴードン&マクファイル)スペイサイド

 コニッサーズ・チョイスの一本。40度。
 アイランズのタリスカー同様、ジョニー・ウォーカーの核となる原酒モルト。
 マルティニック・ラムの香りを持つフル・ボディ。ホットな辛口でアフター・テイストに特徴あり。フィニッシュが長く、スモーキーからビターへと次第に変化していく。
 ゴードン&マクファイル社、サマローリ社、ハート・ブラザーズ社などから加水タイプが、アデルフィー社、ゴードン&マクファイル社、シグナトリー社、ダグラス・レイン社、イアン・マキロップ社、マッカーサー社からはカスク・ストレングスが頒布されている。

トミントゥール(10年)※ スペイサイド  

 40度のディスティラリー・エディション。
 蒸留所の設立は1964年、出荷は1972年より。他に同14年ものとトミントゥール・グレンリヴェット12年等があり、共にホワイト&マッカイの原酒モルト。
 リキュール系の甘さを持ち、ソフトでライトな飲み口。ビギナー向け。

ピティヴェアック('86 イアン・マクロード)スペイサイド

 チーフテンズの一本。バーボン・ホグスヘッドの14年もの、43度。4樽、1074本のリミテッド・エディション。
 ディスティラリー・ボトルはユナイテッド・ディスティラーズ社の花と動物シリーズだが、本品はそのオイリーな舌触りはなく、きれのよさがそのままホットなアフター・テイストに繋がって行く。
 ダフタウン蒸留所に隣接する。仕込用水からポット・スティル、熟成庫までを共にする、謂わば弟でありながら、兄とは異なり個性的。蒸留所は93年に閉鎖。
 自己主張が強く、ダルユーインのようなホットな辛口。ピリピリ感を伴うフィニッシュが比較的長く続く。同じ飲むなら、ダフタウンよりこちらがお薦め。
 ブラックアダー社とイアン・マクロード社から加水タイプのボトルが、キングスバリー社、ケイデンヘッド社、ダグラス・レイン社、イアン・マキロップ社からカスク・ストレングスが頒布されている。

ベンローマック(12年 ゴードン&マクファイル)※ スペイサイド

 ゴードン&マクファイル社が92年にユナイテッド・ディスティラーズ社から買収したベンローマック蒸留所のディスティラリー・エディションにして、40度。
 83年に閉鎖されたが、98年に公式に操業再開。新たなポット・スチルによるボトルの発売は2008年の予定。
 飲むほどに苦みが増すモルト・ウィスキー。根生姜、がり、茗荷を思わせる苦みであり、飲むにつれ、もろみ味噌が恋しくなる。もろきゅうでもよろしいが、胡瓜のサクサクした食感はウィスキーには馴染まない。北京味噌もしくはしゃもじに塗りつけて焼く蕎麦味噌のような焼き味噌が相応しい。

アバフェルディ('89 ダグラス・レイン)ハイランド

 オールド・モルト・カスクの一本。11年もの、50度のプリファード・ストレングス。456本のリミテッド・エディション。
 1897年に閉鎖されたピティリー蒸留所から汲み出す硬水を仕込用水に用いる。スムースでまろやかなミディアム・ボディ。デュワーズやブラック&ホワイトの原酒モルト。
 ディスティラリー・エディションはU.D社の花と動物シリーズだったが、オルトモーア、クレイゲラヒと共に、98年にバカルディ社に売却。バカルディ社のニュー・ボトルは2000年から頒布された。
 ディスティラリー・エディションと比してよりクリーミーにして、リッチなフレーバー。フローラルな香りと甘辛のバランスのよさは特筆もの。南ハイランドを代表するまろやかな美酒。
 リバプールのインデペンデント・ボトラーのクレゴーンからグレン・クェッチの名でもボトリングされている。

グレンカダムもしくはブレチン('74 ゴードン&マクファイル)ハイランド

 コニッサーズ・チョイスの20年もの、40度。
 ディスティラリー・エディションは既になく、G.M社のボトルが若干出回るのみ。バランタインとスチュワート・クリーム・オブ・バーレイの原酒モルト。特に後者の核をなすモルトで、其の名の通り、クリーミーな味わいを身上とする。
 ブレチンの名のボトルも頒されている。73年と74年の蒸留酒はとくに美味とされ、珍重される。

マクダフもしくはグレン・デヴェロン('75 ゴードン&マクファイル)ハイランド

 コニッサーズ・チョイスの19年もの、40度。
 マクダフ蒸留所のブランドはグレン・デヴェロン。ディスティラリー・エディションとは異なり、ダグラス・レイン社、ブラックアダー社、ウィルソン&モーガン社等、瓶詰業者のボトルは蒸留所名を用いている。
 ブレンデッドの如くスムースでクリーン。淡泊な味わいに浅めのフィニッシュ。いわゆる、モルト風味のウィスキー。  

バルブレア('73 ゴードン&マクファイル)ハイランド

 ゴードン&マクファイル社の100周年記念ボトルの一本。21年もの、40度。
 バランタインの主要原酒。僅かに西洋梨の香り、滑らかな口当たりと軽く華やかな味わい。ロス州一帯は厚いピート層におおわれているが、オークニー島のハイランド・パーク同様、バルブレアのピートも若く、非常にドライでもろいのが特徴。
 蒸留所はアライド・ディスティラーズ社の系列で、同社のバランタインの主要原酒だったが、現在ではノックドゥー同様、インバーハウス・ディスティラーズ社が所有している。インバーハウス社初のディスティラリー・エディションは40度の16年ものだが、本品と比して全体に軽く、穏やかな味わい。

インヴァリーブン('84 ゴードン&マクファイル)ローランド

 11年もの、40度。
 過去、ディスティラリー・エディションが販売されたことはなく、蒸留所そのものも91年に閉鎖。
 ローランド地域で最後までローモンド・スティルを使用した蒸留所。ちなみに、ローモンド・スティルを用いたモルトではアイランズのスキャパが有名だが、他にも、グレンバーギ蒸留所のグレンクレイグ、ミルトンダフ蒸留所のモストウィ等がある。