【アデルフィー・ディスティラリー Adelphi Distillery Ltd】

 1902年に閉鎖されたアデルフィー蒸留所のオーナーの末裔ジミー・ウォーカーが1993年にエディンバラで設立。低温濾過、即ちフィルターの無使用と無着色のカスク・ストレングスを専門とする。ラベルとボトルのデザインはスコットランドのグラハム・スコットの手になる。少量生産のため、英吉利では主にメール・オーダーで頒されている。信頼できる瓶詰業者のひとつなのだが、わが邦での評価は異常なまでに高い。

【アンガス・ダンディ】

 スコッチ・ウィスキーに限らず、スピリッツ全般を取り扱う。生産、ブレンディング、ボトリング、販売に50年以上の歴史を持つロンドンの同族会社。オリジナル・ブランドに「アンガス・ダンディ」「ザ・ダンディ」「オールド・ダンディ」「パーカーズ」等がある。

【イアン・マキロップ Iain Mackillop】

 マスター・オブ・ワインの称号を持つグラスゴーの瓶詰業者。アンガス・ダンディ社傘下のカンパニーであり、モンゴメリー社とは兄弟会社になる。「マキロップ・チョイス」の名でコレクションが頒されている。同コレクションには稀少なものも含まれるが、一部にベスト・コンディションとは言いかねるものあり、総体として玉石混淆の感は否めない。

【イアン・マクロード Ian Macleod & Co.Ltd.】

 スカイ島の豪族、マクロード家のイアン・マクロードがオーナー、エディンバラ近郊のブロックスバーンに本拠地を置く。同社はイングランドでの「グレンファークラス」の発売元。「タリスカー」をベースに用いたブレンデッド・ウィスキー「マリー・ボーン」「アイル・オブ・スカイ」や「クイーンズ・シール」で識られ、「チーフテンズ・チョイス」とは姉妹関係にある。同社が関与するボトルについて一言。蒸留所名を記載できるボトルはイアン・マクロード社、蒸留所名を記載できないボトルはスコティッシュ・インデペンデント・ディスティラーズ社というように区分している。

 1999年に頒された上記「チーフテンズ・チョイス」は2001年に「チーフテンズ」と変更。ラベル、パッケージ共に一新、フルラインナップとなった、初入荷は14点。ダグラス・レイン社の「オールド・モルト・カスク」と共に今後目の離せないシリーズとなった。

【インター・トレード Inter Trade】

 イタリアの酒商にして同国のインデペンデント・ボトラーの先駆け。継続的にボトリングはしていないが、斬新なラベルとクオリティーの高さは特筆もの。生産量の少なさとカリスマ性によって、大半はコレクターズ・アイテムとなっている。同社は樽ごとに飲み頃を見極めた上でボトリングを行う。従って、コンディションは頗るよろしく、また檻が多いのが特徴となっている。

【ウィスク・イー Whisk-e】

 アラン・ジャパン社を母体として2000年に設立。アイル・オブ・アラン・ディスティラーズ社のモルト・ウィスキーの他、「ザ・スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティー」や土屋守氏選になる「シングル・カスク・コレクション」等を取り扱う。

【ウィリアム・ケイデンヘッド WM Cadenhead】

 1842年、エディンバラにて創業。現在はキャンベルタウンを本拠地とし、エディンバラのキャノンゲートとロンドンのコヴェント・ガーデンに店舗を持つ。スコットランド最古のインデペンデント・ボトラーにして、ゴードン&マクファイル社と共に業界の雄。オーナーはJ&Aミッチェル社でスプリングバンク蒸留所とは同資本。「オーセンティック・コレクション」「オリジナル・コレクション」「ボンド・リザーヴ」「チェアマンズ・ストック」等のコレクションがある。着色と低温濾過を施さず、樽と樽とのヴァッティングも一切行わない。一樽限定のシングル・カスクという贅沢な飲み方を世界に広めた第一人者。子会社にイーグル・サム社とダッシーズ社があり、キングスバリー社、サマローリ社、シグナトリー社、スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティー社等、多くのボトラーに樽を供給している。ユナイテッド・ディスティラーズ社のボトルに満足せず、さらなる刺激をお求めの方にお薦め。大半のボトルは及第点を軽く越えるが、なぜか準オフィシャルに相当するスプリングバンクだけは頂けない。

【ウィリアム・マックスウェル William Maxwell & Co.Ltd.】

 イアン・マクロード社と同資本のカンパニーで、「シールダイグ」と題するコレクションを頒す。アルマニャックのボトルを用い、ギフト用としてフランス国内で販売されている。シールダイグとは西ハイランドにある風光明媚な漁村名。

【ウイルソン&モーガンWilson & Morgan】

 エディンバラの瓶詰業者。「バレル・セレクション」の名でコレクションを頒している。実に多くのボトルがあり、チョイスを愉しめるのは利点だが、「マキロップ・チョイス」同様、中にはベスト・コンディションとは言いがたいものもあり、購入の際には選択すなわち冒険が必要となる。

【エイコーン Acorn】

 インデペンデント・ボトラーではないが、わが邦では稀少な酒商。レアなモルト・ウィスキーを数多く取り扱い、注文にも可能な限り応じている。「ナチュラル・モルト・セレクション」と題するオリジナル・ブランドも頒布。

【カレドニアン・コネクションズ Caledonian Connections】

 ブラッカダー社と同資本のカンパニー、本社はエディンバラ。旧社名はケルティック・コネクションズ社。ラベルに鮮やかなケルト模様をあしらったドイツ向けボトルを専門に頒している。

【キルシュ・インポート Kirsch-Import】

 グレン・スコマ社と共にドイツの酒商。

【キングスバリー Kingsbury & Co.Ltd.】

 キングスバリー社はスコットランド東部アバディーンのワイン商。現在ではロンドンに本社を持ち、ワインと蒸留酒全般を扱う。ボトラーのケイデンヘッド社とその子会社イーグル・サム社と太いパイプを持つ。着色、添加は一切行わず、濾過はペーパー・フィルターのみ使用。すべてがシングル・カスクであり、蒸留年月日、瓶詰年月日、樽の種類等、モルトの性格を識るに必要な項目はラベルに記載されている。なお、ラベルに著されたテイスティング・ノートは鑑定家ジム・マレーの手になるもの。

 2000年4月「ケルティック・コレクション」が新たに頒された。ケルト文字をあしらった美しいデザインのラベル、中味も秀逸なコレクションである。

【クレゴーン・ディスティラーズ Cleghorn Distillers】

 クレゴーン・ヴァントナーズ社と同資本のカンパニー。ラナークに本拠地を置き、リバプールに熟成庫を持つ。一昔前の「グレンファークラス」のオフィシャル・ボトルを想わせる角瓶をもっぱら用い、カスク・ストレングスのみ頒布する。コレクションは題して「シングル・カスクーシングル・モルト」。概してコンディションはよいが、「タムドゥー」が「オーキンドゥー」、「アバフェルディ」が「グレン・クエッチ」、「グレンロセス」が「ブルイマレイ」等、蒸留所名の表記が異なるのが難儀である。

【クレッグ・ホーン・ヴィンテージ】

 ラナークの瓶詰業者。

【グレン・スコマ Glen Scoma】

 キルシュ・インポート社と共にドイツの酒商。一モルト愛好家に過ぎなかったオーナーの情熱がボトラーの設立に至った。「グレンスコマ」の名でコレクションを頒す。ボトルの裏側に詳細なテイスティング・ノートが貼付されている。イタリアのドナート社共々、楽しみなボトラーである。ちなみに、コスメティックな味わい、もしくはシェリー香の強い甘口のモルト・ウィスキーを好むフランスとは異なり、ドイツ人はスモーキーなモルト・ウィスキーがお気に入り。

【グレンヘヴン Glenhaven】

 ケイデンヘッド社のかつての社長ビル・トムソンのセレクション。主としてアメリカで販売されている。

【ゴードン&マクファイル Gordon & Macphail】

 1895年、当初食料品店としてエルギンで創業。ウィスキー産業がまだブレンデッド中心の頃から同社は世界に向けてボトルを輸出、モルト愛好家を魅了してやまなかった。謂わば独立瓶詰業者のさきがけであり、今日のモルト・ウィスキー人気の蔭の立て役者。1992年、ベンローマック蒸留所をユナイテッド・ディスティラーズ社より買収。豊富な在庫を用い、「コニッサーズ・チョイス」「マクファイルズ・コレクション」「マクファイル・プライベート・コレクション」等、多くのコレクションを頒している。1995年にボトリングされた「100周年記念ボトル」は総じて樽の選択がよく、美味なものが多いのでお薦め。また、「コニッサーズ・チョイス」は各地の蒸留所のモルト・ウィスキーを網羅、ユナイテッド・ディスティラーズ社の「クラシック・モルト・シリーズ」と共に入門編として最適。ただし、シングル・カスクではなく、アルコール度数も40度のため、刺激と香味に欠けるのが難点。

 同社の「マッカラン」はすべてがヴィンテージ・モルト。一方、「マクファイル」と称するエイジング・モルトを頒しているが、その中味も「マッカラン」である。しばしば頒布が途絶える曰く付きのブランドだが、オフィシャル・ボトルと比して安価。お薦めの一本である。

【ザ・クライズデール・オリジナル・スコッチ・ウィスキー The Clydesdale Original Scotch Whisky Co.Ltd.】

 「クライズデール」との名で熟成5年から10年の比較的若いカスク・ストレングスをシングル・カスクにて瓶詰め。他のボトラーとの差別化を図る。低温濾過、加水、着色を一切行わず、モルト・ウィスキーの素地を知るには最適。ダグラス・マクギボン社の「プロヴァナンス」と共に一押しのコレクションである。総称の「クライズデール」とはグラスゴー近郊にかつて存在した蒸留所名。

【ザ・スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティー The Scotch malt whisky society】

 1983年、エディンバラに住むモルト・ウィスキー愛好家のシンジケートとして発足。日本支部の設立は1993年。「何も加えず、なにも除かず、熟成庫で眠り続けていた、そのままのウィスキー」を嗜むのが唯一にして最大のポリシー。同社のシングル・モルトは当たり外れが少なく、ベスト・コンディションのものが多い。香味共に申し分なく、最も信頼できる瓶詰業者のひとつである。わが邦での扱いはウィスク・イー。ラベルに蒸留所名の記載はなく、コード番号が著されている。

【ザ・ヴィンテージ・モルト・ウィスキー The Vintage Malt Whisky Co.Ltd.】

 1992年、ブライアン・クルックによってグラスゴーのバーズデンで創業。ヴァテッド・モルトの「フィンラガン」をボトリング。シングル・モルトでは「クーパーズ・チョイス」の名でコレクションを頒している。「マキロップ・チョイス」や「バレル・セレクション」同様、やはり購入の際には選択が必要となる。クーパーズとは樽職人の意。2001年5月にラベルが一新された。

【ザ・ボトラーズ The Bottlers】

 1994年、エディンバラにて設立。同じエディンバラのジェームズ・マッカーサー社と共に、閉鎖された蒸留所の珍しいモルトを取り扱うことで識られる。コニャックを想わせる撫で肩の丸瓶とシンプルなラベルが特徴。同社の商品の大半はディスティラリー・コンディション。それ故、面白味には欠けるが、破綻のないのが取り柄。

【ザ・マスター・オブ・モルト The Master of Malt】

 本拠地はケント州タンブリッジ・ウェルズ。社名を用いたコレクションを頒している。

【サマローリ Samaroli】

 イタリアはブレシアの酒商。スプリングバンク蒸留所、ボトラーのケイデンヘッド社とその子会社ダッシーズ社と太いパイプを持ち、オリジナルのヴァテッド・モルトも頒している。

 同じイタリアの酒商インター・トレード社同様、ボトルには檻が多く含まれる。樽の個性、ひいてはウィスキーの香味の神秘を識るに最適。

【ジェームズ・マッカーサー James Macarthur & Co.Ltd.】

 1982年、エディンバラで創業。主として、閉鎖された蒸留所のモルト・ウィスキーを扱う。多くのボトルを頒しているが、特に品質のすぐれた商品は「ジェームズ・マッカーサー・ファイン・モルト・セレクション」と名付けられる。

【シグナトリー・ヴィンテージ Signatory Vintage Scotch Whisky Co.Ltd.】

 1988年、リースで創業。現在はエディンバラに事務所兼倉庫を持ち、ボトリングから保管に至るすべての業務をを行う。「ダンイーダン」「サイレント・スティルズ」等、他では飲めない稀少なシングル・カスクが多い。ヨーロッパ向け限定商品として「アン・チルフィルターズ・コレクション」またドイツ向けに「ザ・シングル・シングル・モルト・コレクション」「ナチュラル・ハイ・ストレングス」をボトリングするなど、多彩なコレクションで識られる。ラベルにはカスク・ナンバーやボトル・ナンバー等、詳細が著されてい、樽がもたらす個々の性格の違いが愉しめる。同社のカスク・ストレングスにあって、寸胴型丸瓶のシリーズは逸品揃い、ぜひ味わって頂きたいモルト・ウィスキーである。

【ジョン・ミルロイ John Milroy】

 1947年に創業。品質の佳さに定評あり、また大層な親日家であり、「キング・オブ・モルト」と呼ばれる業界の名物男でもある。兄ウォーレス・ミルロイはウィスキー評論家、弟のジョン・ミルロイはロンドンのソーホーに店舗を持つ。「ゴールデン・ストレングス」の名でコレクションを頒す。ダグラス・レイン社の「オールド・モルト・カスク」同様、大半のボトルを50度に限る。当然、無着色にて低温濾過は施されていない。

【スコッチ・モルト・セールス Scotch Malt Sales Ltd.】

 数少ないわが邦のインデペンデント・ボトラー。イアン・マクロード、クレッグ・ホーン・ヴィンテージ両社と太いパイプを持ち、オリジナル商品以外にもアンガス・ダンディ、ヴィンテージ・モルト、リキッド・ゴールド、ブリストル・スピリッツ各社のボトルを取り扱う。日本人画家の手になるラベルが貼附された「ディスティラリー・コレクション」は7〜8社の瓶詰業者の貴重な樽から選別、すこぶる魅力的なコレクションに仕上げている。

【スコッツ・コレクション】

 

【スコティッシュ・インデペンデント・ディスティラーズ Scottish Independent Distillers Ltd.】

 1928年、蒸留所とブレンダーのグループによって設立。「チーフテンズ・チョイス」「グレン・アラン」をはじめ、さまざまなコレクションを頒している。特に後者は「アルタナベーン」と「グレンバーギ」を2000年に同時頒布。「バランタイン」と「シーバス・リーガル」の原種モルトを並べて味わうという贅沢が可能になった。選定には文句なく、コスト・パフォーマンスに優れたコレクションなのだが、香味共に淡く、パンチに欠ける。

【ダグラス・マクギボン Douglas Mcgibbon & Co.Ltd.】

 1949年、グラスゴーで組織された瓶詰業者。蒸留所の作業に携わった職人の末裔による同族会社にして、ダグラス・レイン社の系列。広大な熟成庫を持ち、60年代以降、色付けとチル・フィルターを拒み、「プロヴァナンス」の名のもとにコレクションを頒布。特にアイラ島の蒸留所とは太いパイプを持つ。「クライズデール」同様、熟成年数の若いモルトが中心だが、共に品質のよさでは一頭地を出す。「マクギボン・プレミアム・リザーヴ」とのブレンデッド・スコッチも頒している。割水を施した低アルコールのモルト・ウィスキーをマクギボン社より、プリファード・ストレングスもしくはカスク・ストレングスをダグラス・レイン社と割り振りしている。

【ダグラス・レイン Douglas Laing & Co.Ltd.】

 1949年、グラスゴーにて設立。「キング・オブ・スコッツ」等、ブレンデッド・スコッチを扱うブレンダー兼輸出業者。1999年より「オールド・モルト・カスク」と題するシングル・モルトのコレクションを頒布。チル・フィルターを施したものはクリアー・ボトルに、施されていないものはグリーン・ボトルに詰められる。アルコール度数を50度に限るのが同社のポリシーだが、熟成期間が長く、アルコール度数が50度未満のものはカスク・ストレングスとして頒される。

 50度を越える高アルコールのボトルは望むべくもないが、稀少品が多く、比較的コンディションもよい。入手しにくい蒸留所の長期熟成品のボトリングがこのところ続いている。現在、最も活躍しているボトラーである。

【土屋守シングル・カスク・コレクション】

スコッチ文化研究所を主宰する土屋守さんのセレクション。1998年11月より頒布がはじまり、現在シリーズ第6回にて全19種をボトリング。先行きが愉しみである。取り扱いはウィスク・イー。

【ドナート Donato & C】

 イタリアはジェノヴァの酒商。ダン・イーディアンとのコレクションを頒す。ダン・イーディアンとはスコットランドの古都エディンバラのケルト語読み。オスロスク12年、カリラ10年、ボウモア9年、マッカラン11年等が当初ボトリングされた。すべてが46度のシングル・カスク。無着色、低温濾過は施されていない。適度に澱もあり、コンディションは良好、かつコスト・パフォーマンスに勝れる。他にカスク・ストレングスも頒布している。大いに期待できるボトラーである。

【ハート・ブラザーズ Hart Brothers Limited】

 1988年、グラスゴーにて設立。「ホワイト&マッカイ」および「スプリングバンク」のブレンダーであったアリステア・ハートとドナルド・ハートの兄弟がオーナー。「ファイネスト・コレクション」を頒布。アルコール度数43度をモットーとしてきたが、最近ラベルの色を変えて「カスク・セレクション」を手掛ける。樽選びには定評があり、高アルコールのボトルには傑出したものが多く、近年欧州では高い評価を得ている。

【ブラッカダー・インターナショナル Blackadder International】

 1995年、ジョン・レロンドとロビン・トゥチェクによって創業。「ブラッカダー」名義のボトルの他、ドイツ向けに「ケルティック・コネクションズ」、現在の「カレドニアン・コネクションズ」をボトリング。低温濾過、着色は一切行わない。ちなみに、同社のブランド「オールド・マン・オブ・ホイ」の中味は「スキャパ」。

 ヴィンテージ・モルトとエイジング・モルトの双方を頒布。前者はカスク・ストレングスであり、キングスバリー社のボトル同様、すべてがシングル・カスクである。ボトリングに際しては飲み頃を計量しつくしている。従ってコンディションのよいボトルが過多を占め、モルト・ファンを喜ばせている。

【ブリストル・スピリッツ Bristol Spirit's】

 イングランド西部のブリストル港に本拠地を持つ瓶詰業者。カリブ諸国で蒸留したラムを主として扱う。ちなみに、熟成庫はリバプール。最近モルト・ウィスキーを扱うが、シェリー樽熟成の商品に力点を置く。

【ブルームスバリー Bloomsbury】

 ブルームスバリーは大英博物館などのあるロンドンの地区名。そこに本社を構えるカンパニーであり、地名をそのまま商品名に用いたフレーバード・ジンは有名。良質なモルト・ウィスキーを所有、それらプライベート・ストックが過去僅かにボトリングされたことがある。2000年、久しぶりにリリースを再開。シングル・カスクとノンチルフィルターにこだわりを持つが、上記ブリストル・スピリッツ社同様、シェリー樽の長期熟成品に力を入れる。モルト愛好家の評価は極めて高いが、大半が200本ほどのリミテッド・エディションである。

【ベリー・ブラザーズ&ラッド Berry Bros & Rudo】

 1923年創業の酒類、食料雑貨販売の老舗。ロンドンのセント・ジェームズ街に店を構え、伊達男ボー・ブランメル贔屓の店として有名。通称「ベリーズ」だが、わが邦では「B.B.R」と呼ばれる。オリジナル・ブランドに「カティ・サーク」「セント・ジェームズ」「ベリーズ・ベスト」「ブルー・ハンガー」等があり、「グレンロセス」の発売元としても識られる。ブレンデッド・スコッチの販売を主とし、モルト・ウィスキーの取り扱い量は少ないが、「ベリーズ・オウン・セレクション」の名でボトラーとしても活躍。

【ヴェリエ Da Velier】

 イタリアはジェノヴァの酒類輸入業者にして、シグナトリー社と太いパイプを持つ。

【マーレイ・マクデヴィッド Murray Mcdavid Ltd.】

 グラスゴーとロンドンに店を持つ瓶詰業者。オーナーのゴードン・ライトのファミリーは1828年以来、スプリングバンク蒸留所を経営。「スプリングバンク」のオフィシャル・ボトル同様、すべての商品は46度に調整されている。2001年初頭、アイラ島のブルイックラディ蒸留所をジム・ビーム・ブランド社より買収。

 同社のボトルの裏ラベルには必ず繰り言が著されている。例えば「アードベッグ」のラベルでは、蒸留所をわが社に売らず、何故グレンモーレンジ社に売却したのかといった類である。「ラフロイグ」も然り、ディスティラリー・コンディション以外のボトルが頒布されるのを嫌がった同社との間に訴訟騒ぎを起こしている。結果、わざとラフロイグのスペルを誤植させ、お茶を濁す始末。かかる生臭さに私などは惹かれるのである。

【マルコム・プライド】

 アンガス・ダンディ社と同資本のカンパニー。

【ミッシェル・クーブレ Michel Couvreur】

 フランスはバーガンディー地方のワイン醸造所のオーナー。「ヴェリー・シェリード・シングル・シングル」や「シングル・シングル・ベレバーレイ」を頒布。共に典型的なハンドクラフト・ウィスキー。ちなみに、後者は19世紀末まで栽培されていた伝説の大麦ベレバーレイを原料に、フロアモルティングはハイランドパーク蒸留所、蒸留はエドラダワー蒸留所、熟成はブルゴーニュ地方のセラーでクリーム・シェリーとオロロソ・シェリーの樽を用いるという、こだわりのモルト・ウィスキー。

【ムーン・インポート Moon Import】

 イタリアはジェノバの酒商にして輸入業者。専らワインとスピリッツを扱う。高品質のボトルのみ取り扱うことで定評あり、コンピューター・グラフィックを駆使したラベルのユニークさでも識られる。ポテンシャルの高さと生産量の少なさによって、大半はコレクターズ・アイテムとなる。「コレクション・ムーン」の名でボトリング。「イン・ザ・ピンク」「ザ・カー」等のコレクションがある。同じイタリアのサマローリ社とのジョイント・ボトリング「ドリームス」も頒している。

【モンゴメリー Montgomerie Co.Ltd.】

 アンガス・ダンディ社傘下のカンパニー、本社はグラスゴー。従って、マキロップ社とは兄弟会社になる。ボトリング・ライセンスを持ち、樽と樽とのヴァッティングは一切行わず、スモール・バッチを売りとする。第一回頒布は2000年末。

【ラ・リザーヴ La Reserve】

 ロンドンのワイン商。1990年より、モルト・ウィスキーの瓶詰業者としての活動を初める。同社のボトルはフレーバーが強く口当たりはよいが、若干足腰の弱いのが玉に瑕。

【リキッド・ゴールド Liquid Gold Enterprises】

 1997年、グラスゴーで創業。ロンバード社とのパイプが太い。「カレドニアン・セレクション」の名でカスク・ストレングスを頒している。カレドニアンとはスコットランドのかつての呼び名。同社のボトルは甘味が深く舌触りはよいが、ボディがいささか軟弱。それ故、ラ・リザーヴ社のコレクション同様、日本人にはすこぶる好評。

【ロイヤル・マイル】

 エディンバラの瓶詰業者。

【ロンバード Lombard Scotch Whisky Ltd.】

 グラスゴーとロンドンに店を持つ瓶詰業者。「ジュエルズ・オブ・アイラ」「ジュエルズ・オブ・キャンベルタウン」等々、地域ごとにラベル・デザインが異なるジュエルズ・コレクションを頒布している。ジュエルは至宝、珠玉、貴重の意。ただし、頒するボトルは玉石混淆。長期熟成の人気商品は問題ないが、若いアイテムにはくれぐれも注意。情報を持たずに購入する時は清水の舞台から飛び降りる覚悟が必要。

 

 

 

 1996年以降、モルト・ウィスキーを扱う業者が急速に増えている。記載したインデペンデント・ボトラーズ以外にも、エディンバラ周辺ではウェイヴァキー・ヴァントナーズ、フォース・ワイン、ルヴィアン・ボトル・ショップ、ロイヤル・ミル、ヴィルヌーヴ・ワイン等、グラスゴー周辺ではペックハム&ライ、ウィリアム・モートン、ギャヴィン・リドル、ワラセス・エクスプレス、セントラル・キャッシュ&キャリー等、ロンドン市内ではオドビンス、ザ・ヴィンテージ・ハウス、ザ・ウィスキー・エクスチェンジ等のカンパニーがある。

 ウィスキー業界ではブローカーが中心的役割を占める。ブローカーは大量に購入したモルト・ウィスキーをブレンド業者やインデペンデント・ボトラーズに販売する。桶買いならぬ樽買いである。その樽買いと、昨今のモルト・ウィスキーのブームが相乗し、瓶詰業者のボトルの洪水がはじまっている。過去、モルト・ウィスキーを扱っていなかったワイン商や食料品店がプライベート・ボトルを販売。聞くところによると1998年以降、年間に輸入されるボトルは軽く1000種を越えるという。愛好家にとってはうれしい悲鳴だが、蒸留所は苦い思いを噛みしめている。ボトラーズの扱うウィスキーが、オフィシャル・ボトルの売れ行きを抑制しているのではないかとの疑惑がそれである。事実、ボトラーズへ流れるモルト・ウィスキーが急速に減っているようである。このところU.D.V(ディアジオ)社とボトラーズとの間に諍いが絶えず、蒸留所名を明記しないインデペンデント・ボトルが増えている。かかるボトルはシングル・カスクとしてボトリングされることが多く、美味なものが大半を占めるにもかかわらずである。このままでは瓶詰業者は自らの首を絞めることになるかもしれない。洪水の要はないが、適度なチョイスは残してほしいものである。

 なお、どうしても蒸留所名が判らない時には輸入元に問い合わせれば氷解。諦めず気長に「お気に入り」を探索されんことを願います。

 

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