【仏蘭西篇】

ボルドー

メドック地区マルゴーからはシャトー・ジスクールとシャトー・タヤックそしてシャトー・マルゴー、同ポイヤックからはシャトー・ポンテ・カネとシャトー・ムートン・ロートシルト。白ワインではグラーヴのシャトー・ラ・ギァルドとソーテルヌのシャトー・ディケム。すべてシャトー元詰めを一度は味わう必要あり。

小さくかつ良心的なシャトーのワインでは、シャトー・ゴンティエール、シャトー・ベレール、シャトー・サンブランカ。メドック地区からはシャトー・カロリーヌとシャトー・パタシュ・ドォー。サンテミリオンではシャトー・ベルビュー・フィジャックが格安。セカンドラベルだが、取り敢えずこの地区のグランクリュを味わうにはこれで十分。今ひとつ、オーガニックで売り出したヴィニョーブル・ブーロン・ラトゥールのシャトー・シャヴリニャックも値の割には酸味が強く美味。白ワインではシャトー・アンリとシャトー・ヴィユ・ガビランがお買い得。

ブルゴーニュ

リニエのシャンベルタン(赤)、アドリアン・ベランのシャルルマーニュ(白)の他、ルイ・ラトゥールのロマネ・サン・ヴィヴァン(赤)、同ブルゴーニュ・アリゴテ(白)、同モンラッシェ(白)がお奨め。なお、モンラッシェではフォンテーヌ・ガニャールのバタール・モンラッシェやモレイのシャサーニュ・モンラッシェも安心。

コート・ドゥ・ニュイからはジャン・ヴィレリもしくはジョルジュ・リニエのクロ・サン・ドゥニとモレ・サン・ドゥニ。ジャン・ショヴネのニュイ・サン・ジョルジュもお奨め。後者はデリケートなワインだけにネゴシアンの安価なものはやめたほうがよい、間違いなく後悔する。コート・ドゥ・ボーヌからは値頃感のあるドメーヌ・コルニュのサヴィニ・レ・ボーヌとショレイ・レ・ボーヌ。同一の葡萄園で、共に酸味が強く美味。他ではL・シャイローのリュリイ・ブルゴーニュとアロックス・コルトンを挙げておこう。比較的安価な所ではマコン、シャロネーズ、ボジョレー・ヴィラージュの各地区。特にボジョレー・ヴィラージュではクルーズ・ノワレ、ドメーヌ・デ・パルム、ビショ・メイユールの銘柄が美味。また、シャブタリザシオンを行わず、オークの大樽を用いる等、ジャン・ポール・ゴーティエのボジョレー・プリムールも見逃せない。

ロワール

ルシアン・クロシェのサンセールはすべてが絶品。他ではトゥーレーヌ地区から、ピエール・ジャック・ドリュエのブルグイユ、フランシス&フランソワ・デブルドのシノンがお奨め。そして、この渓谷ではやはり白ワインが美味。フェルナンド・ティネル・ブロンドレのプイイ・フュメとルイ・メテロのムスカデ・キュヴェ・ワンは二重丸。キュヴェ・ワンが入手不可能な時はグラン・ムートンで十分。そして本命はカベルネ・フラン種で醸されるカベルネ・ダンジュ。ルコント・ジローの手になるカベルネ・ダンジュは傑出。

コート・デュ・ローヌ

ローヌ地方はシャトー・ヌフ・デュパプがメインだが、他でもラ・シャベルもしくはル・グレアルのエルミタージュ、G・デルヴューのコート・ロティ、J・C・アセマのリラック・ルージュ・シラーは見逃せない。白ではジョルジュ・ヴェルネイのコンドリューとジャック・ルムニシエのサン・ペレがお奨め。

コート・ドゥ・プロヴァンス

ドメーヌ・タンピエのパンドール(赤、ロゼ)、ドメーヌ・デュ・パテルネルのカシス(白)、ドメーヌ・ドゥ・ベルナルドのコート・ドゥ・プロヴァンス(赤、ロゼ)がお奨め。特にベルナルドのロゼは芳香佳し。

アルザス

ロゼのように色の淡いルージュ・ダルザス・ピノ・ノワールにとどめを指すが、ドブフ・イリオンのアルザス・シルヴァーネル(白)も忘れがたい。キュヴェ・デ・コント・デギシェムで知られるレオン・ベイエ家のワインは特筆もの。

ジュラ

ジャン・ブルディ社のコート・デュ・ジュラとシャトー・シャロンは一度は味わってみたい白ワイン。後者はヴァン・ジョーヌと呼ばれる酸化ワインで、ヴァン・ドゥ・パーユと共に独特のテキスチャーを持つ。他ではドメーヌ・ド・ラ・パントゥのアルボワを特筆。アルボワの白は丹念に探せば安価なもの有り。

シャンパンetヴァン・ムース

シャンパンではマイイ・シャンパーニュ・エクストラ・ブリュットとシャンパーニュ・レゼルブ・ドゥ・レンプルール、ブリースのクラマン・ブリュットが特出。一般的なものでは英国王室御用達のランソンがやはり美味。ドンペリニョンは人気筋だが、テイストではランソンに及ばない。ヴァン・ムースではフルヌのブランケット・ドゥ・リムーとシシエテ・ユエのものがお奨め。

ヴァン・ドゥ・タブル(テーブル・ワイン)

G・デュブッフのキュベ・ドゥ・ラミティエが一押し。昨今、日本人向けにブレンディングされたデュブッフのヴァン・ドゥ・タブルが多く見受けられるが、頂戴できるものは尠ない。香りもテキスチャーも平坦にして、テイストに起承転結がない。また、ボジョレーにもはずれが多く要注意。比して、コート・デュ・ローヌのグルナッシュやシラー種を主とするワインに佳酒あり。

白ではヴァン・ドゥ・ペイ・ドック・シャルドネとルイ・メテロのブラン・ドゥ・ブランが文句なしに旨い。特に後者は町の酒屋で売られている、いかなるムスカデより美味。

其他

シャンパーニュ、サヴォア、カオール、ガイヤック、ラングドック、ルーシヨン、ボルドー東部のベルジュラック、南西地区の各地方がある。

南西地区には佳酒が多く、要注意。例えば、ジョルジュ・ヴィグルーのカオールやフレデリック・ラプラスのマディラン等、近年頗る高い評価を受けている。カオールのシャトー・ドゥ・オート・セールやバスク地方のイルーレギーも忘れがたい。ドメーヌ・ドゥ・トラッチアのヴァン・ドゥ・コルス。ラングドック・ルーシヨン地区のミネルヴォアも欠かすことが出来ない。珍しい所ではシャンパーニュ地区で醸されるコトー・シャンプノア・ブージー・ルージュがお奨め。ブリースのコトー・シャンプノアにはシャルドネ種の白もあり、南部ではロゼ・デ・リセイという、やはり発泡性でないワインが造られている。

 【伊太利亜篇】

トスカーナ

ピオンディ・サンティのブルネロ・ディ・モンタルチーノ、コントウッチのヴィノ・ノビレ・ディ・モンテプルチアーノ、ヴィッキオマッジオのキァンティ・クラッシコは共に絶品。キァンティは品質によって三段階に分かれるが、やはりキァンティ・クラッシコ・リゼルヴァがお奨め。キァンティと名のつくワインは多いが、カステッロ・ヴィッキオマッジオ醸造所の製品は別格。他ではリッカルド・ファルキーニもしくはファットリア・ニッタルディのキァンティがお奨め。

なお、ヴィッキオマッジオのヴィノ・ダ・タヴォラであるリパ・デッレ・モーレとリパ・デッレ・モンドーレは共にサンジョヴェーゼ種を用いた傑作。仏蘭西の著名シャトーものと比して、ワインがかくまで繊細で優雅なものであるかを再認識させられる一本。他ではファルチーニのパレタイオ、イル・ポッジオーロのカルミニャーノ、サンティのロッソ・ディ・モンタルチーノが美味。

ピエモンテ

パオロ・コルデロもしくはモンファレットのバローロ、ネイヴェもしくはファットリア・サン・ジュリアーノのバルバレスコ、デッシラーニのガッティナラ・リゼルヴァとゲンメ・リゼルヴァを特筆。

他ではやはりデッシラーニのコリーネ・ノヴァレージ・スパンナとシッシアーノ。同様にモンファレットのドルチェット・ダルバとバルベーラ・ダルバがお奨め。

ヴェネト

レ・ラゴーゼのレチオット・デラ・ヴァルポリチェッラ・アマローネとセッコ・ベルターニ・ヴァルボリチェッラ・ヴァルパンテーナ。コッレ・ディ・チプレッシのバルドリーノ・クラッシコ・スペリオーレの3点が傑出。ヴァルポリチェッラでは他にカンティーナ・デル・カステッロのものも美味。この地域の甘口は独逸、仏蘭西、洪牙利のそれにひけをとらない。他ではフリウリ・ヴェネツィア・ジュリア地区のピノー種を用いたレフォスコ・ロッソがお奨め。白ではピエロバンのレチオット・ディ・ソアヴェ・クラッシコ・スペリオーレを是非。前記カステッロのソアヴェにもコルテピットーラ・レチョート・ディ・ソアヴェ・クラッシコ・スペリオーレなる逸品あり。

ラツィオ

赤ではヴァローネのロッソ・ピチェノ・スペリオーレ。白ではヴィオロのフラスカティ・スペリオーレとファレスコのエスト・エスト・エスト・ディ・モンテフィアスコーネがお奨め。エスト・エスト・エストには甘酸っぱいだけの辛口で香りのない安価なものが多いので要注意。ちなみに、ファレスコのエストにはポッジョ・デェイ・ジェルシ・ヴェンデンミア・タルディーヴァと称する遅摘み甘口の逸品あり。

ウンブリア

アルナルド・カプライのサグランティーノ・ディ・モンテファルコとモンテファルコ・ロッソがお奨め。この地域ではコルペトローネ醸造所の赤ワインも見逃せない。ブロガル・ヴィニのロッソ・ディ・トルジアーノのように、ウンブリアとラツィオは美味なワインが安価で見つかる可能性大。

エミリア・ロマーニャ

菫の花の香りといわれる有名なサン・ジョヴェーゼ・ディ・ロマーニャを一度は飲むべし。

カンパニア、カラブリア

サヴィアーノのラクリマ・クリスティ・デル・ヴェズヴィオ・ロッソと、白ではビアンキのヴェルディッキオ・ディ・カステリ・ディ・イエジ・クラッシコがお奨め。また有名なフィアノ・ディ・アヴェリーノもカンパニアを代表する白ワインであり、一飲の要あり。

サルデーニャ

メローニ・ヴィーニのナトゥーラ・カンノナウ・ディ・サルデーニャとナトゥーラ・モニカ・ディ・サルデーニャは共に有機栽培の赤ワイン。酸味に特徴があり、美味。

シチリア

赤ではバローネ・ディ・ヴィッラグランデのエトナ・ロッソとエトナ・ロサートも有機栽培。白ではエトナ・ビアンコ・スペリオーレとジョゼッペ・ジェンナもしくはイ・ヴィ・コル・ディ・ポラーラのビアンコ・アルカモがお奨め。

ヴィノ・ダ・タヴォラ(テーブル・ワイン)

赤ではアルバノのカステリ・ロマーニとフラテリ・パスクアのピノ・ネーロ・デル・ヴェネトがお奨め。また、シチリア産のドンナフガータとヴィノ・ダ・タヴォラ・ディ・シチリア・シャルドネは共に美味の白。

伊太利亜のテーブル・ワインは仏蘭西のそれと比して、開栓当初はこくも淡く些か物足りないが、時間の経過と共に酸味が増し、味に深みが生じるケースが多々見受けられる。家庭で嗜まれる時は様々な飲み方を試みられるが肝要。

機会が寡なくて残念なのだが、シチリアで日常飲まれる赤ワインには頗る興味を抱いている。日本と違って、伊太利亜では輸入ワインの混和が許されない。従って頗る良心的なワインが多く、ご教示を乞う。

 【西班牙篇】

ペネデス

ミゲル・トレスのグラン・コロナスとマス・ラ・プラナの他、イベノブル・クリアンサがお奨め。

プリオラート

スカラ・デェイ・カルトイサ・グランレセルバは傑作。ちなみに、カルトイシャ・スカラ・デェイ醸造所はグランレセルバの他にもプリオラート・ティント、ティント・クリアンサ、ネグレ等、8種類の銘柄を頒布。他にも白とロゼが有り、いずれもがお奨め。プリオラートに代表されるカタルーニャ地方ではデ・ムジェル社のものも及第点。

リオハ

ムガ・プラド・グランレセルバ、シグロ・レセルバ、マルケス・デル・ロメラル、アヘッシモ、ラグニーリャ、ビーニャ・デル・オハ・ティント・レセルバがお奨め。この地域には高級品が多いが、値に相応しいかと問われれば疑問。値頃感から云っても、マルケス・デ・カセレス等に代表される安価なものに結構足腰の強いワインが多い。

リベラ・デ・ドゥエロ

カタルーニャ地方のペネデスやプリオラートがブルゴーニュからコート・デュ・ローヌに至るラインだとするなら、リベラ・デ・ドゥエロは差詰めボルドー。ボディの重さではスペイン随一。ベガ・シシリアにとどめをさすが、欠点は値の高さ。現地で買っても3万円を下ることはない。されば、マタルメラかコンデ・デ・シウエラ、今すこし奮発するならモナステリオのレセルバがお奨め。共に巧緻な味わいだが、力強さでいまいち。取り敢えずはその辺りでお茶を濁し、宝籤を買うにしくはなし。

其他

西班牙北西部、ガリシア地方のリアス・バイシャスD.O(仏蘭西のA.O.Cに相当)のサンティアゴ・ルイスとサルネスールのコンデス・デ・アルバレイ・ガルバリョ・ガレゴは絶品。大西洋に面したこの地域の独自の葡萄品種アルバリーニョを100%用いた白ワインだが、どこかで見付けたら是非トライして頂きたい。

シェリー酒の産地、南部アンダルシア地方の地中海沿岸のマラガの町周辺はデザート・ワインとして識られるマラガの産地である。製法からいってワインとシェリーの中間に位置する甘口だが、ショルツ・エルマノスのソレラ1885は是非飲んでおきたい逸品。

他にも、時計回りにバルデオラス、ナバラ、バレンシア、ウティエル・レケーニャ、ムルシア、マラガ。中央部のラ・マンチャとバルデペーニャスの各地方、地区があるが、残念なことにわが邦には一部を除いてほとんど紹介されていない。

テーブル・ワインでは生産量を誇るラ・マンチャ、足腰の脆弱さが気になるナバラ地域よりも、ペネデスやバルデペーニャスの有機栽培のワインに比較的良好なものが見受けられる。有機栽培の第一人者アルベット・イ・ノヤがリリースするワインは比較的安価にして美味なものが多い。

南米や葡萄牙ほどではないにせよ、西班牙にもソバージュな味わいを持つものは多い。美味なワインと出会うには相応の根気が必要。

 

追伸 独逸ワインは次回に。

                   ですぺら主人 一考