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緊急入院3   一考   

 

 消化器内科の羽山医師來室、8日の小腸内視鏡検査の詳細が決まった。午後下剤を飲み(実は前日の夜)、17時から18時半まで(結局19時から2時間)。まずは肛門から、次の日に口から挿入する。これはグラスファイバーの長さが短いため、上下から半分ずつ検査する。肛門側が先になった理由は、大腸に近い部分の方が潰瘍の可能性が高いため。機器は3月13日まで拝借しているものの、数箇所ある腸の狭窄(特に大腸と小腸の繋ぎ目の狭窄がひどい)によって全小腸観察の可能性は低いとのこと。
 内視鏡は筒自体が二重構造になり、先に風船の膨らみあり、細い方の管が直径10ミリ(通常の内視鏡は11ミリ)。細い方が2、3センチ先行し、太い方が後を追う。要するに、全体が腸の形態に合わせて匍匐前進する。検査に伴うリスクは穿孔と出血。
 大腸中央部にも新たなサイトメガロウィルスの潰瘍痕あり、ただし陰性。なお、血液検査も現在は陰性になっている。デノシンが効いたものと思われる。下血は止まっているので、検査が終わる土曜日もしくは日曜日から食事ができそう(期待はしていないが)。
 思っていたとおり、小腸、大腸のサイトメガロウィルス腸炎ならびに潰瘍は腎不全同様、持病として長く付き合って行くしかなさそう。

追記2
 7日、今朝の血液検査には新しくクォンティフェロンという結核菌感染の診断が加わっている。いつもは5本なのだが、今日は8本の採血。この前の胃液採取(泌尿器科のオーダー)の結果は陰性と聞いていたのだが、訊けば羽山医師のオーダーだとか。
 胃液採取はチューブを鼻の穴から胃へ45センチから50センチ入れ、注射器で吸い取る。そのチューブをマーゲンチューブ(Maチューブ)と云う。簡単だし、痛みも伴わない。ただし、気持ちが悪い。病院にはこの種の検査が多い、胃カメラや内視鏡も少し似ている。

追記3
 2月26日に腕の点滴ラインが外された。「腕全体が浮腫で腫れ上がっている」と書いたが、3月7日にやっと腫れが引いた。9日目である。不思議なことに、今頃血管が僅かに浮いてきて穿刺し易くなった。

 免疫抑制剤について。グラセプターは血中濃度を見ながら5.5ミリグラムから3ミリグラムへ減らした。問題はセルセプトで、入院以来250ミリグラムと普段の半分の量に止めている。サイトメガロ腸炎からの出血を防ぐためである。ただし、セルセプトを減らした分、身体の免疫抵抗が高まり、クレアチニンが2.32と高止まりしている。早く元の量に戻したいのだが、下血がないことを確認しなければどうにもならない。

追記4
 8日、長い禁食ゆえ下剤の要はないのだが、飲まざるを得ない。内視鏡前段のセレモニーである。大腸の内視鏡検査に鎮静剤も鎮痛剤もなにもいらないという医師ははじめて。薬剤を使わざるを得ない医師の腕の未熟さ、過去の内視鏡検査はなんだったのだろう。

 下剤のせいで腹が痛い。トイレで息むと下血を思い出して血の臭いに噎せ返る。それにしても、24日のあの非常時にどうして輸血用血液がタイミングよく出てきたのか。瀬戸口医師が必要と思って事前に用意していたのか。赤血球製剤の有効保存期間は21日、通常は需要が生じてから血液バンクへ発注する。間に合わないときに病院間で融通為合うようなシステムは当然あるだろうが。あの血液がなければ確実に死んでいた。

追記5
 東間医師から貧血と低血圧とがまったくの別物と聞く。従って、貧血と低血圧についての過去の記述には混乱がある。ちなみに、わたしは貧血。東間医師と自転車については再度別項を設ける。

追記6
 9日。昨夜の検査について。簡単な鎮静剤と聞いていたが、いきなり酸素マスクで点滴の管になにかを注入、施術の前後は覚えているもののあとは前後不覚。術後、ストレッチャーで病室へ戻り、朝の4時までぐっすりと眠った。小用で起きたが、1時間を経たいまも頭も足下もふらふらする。あんな鎮静剤があるものか。(看護師に訊くと、やはり静脈に打ったのは強力な麻酔剤だそうである。術後、一時覚ます薬を打ったので記憶が残っている筈とか)。
 羽山医師と羽田医師、東京医大の医師だろうかあと一人、それとレントゲン技師と看護師、羽山医師の助手の看護師、以上が施術に当たった方。著しく断片的だが、痛みの合図のつもりで右手を盛んに振っていたことしか記憶にない。小腸内視鏡がいつ挿入され、いつ取り出されたのか、それすら記憶にない。
 手術中はずっとレントゲンは作動中、小腸を透視しながらの内視鏡だが、動く臓器だけに検査しにくく、小腸の狭窄がひどくて深くは這入らなかったようである。潰瘍は大腸から20センチの箇所。要するに大腸内視鏡で見える範囲と変わるものでなかった。折角の機械だが、最新の機能は発揮できなかったようである。下血が止まっていることのみ視認。
 小腸も大腸同様、粘膜および粘膜下組織にびまん性炎症、糜爛、潰瘍形成などをきたす疾患。多くは慢性に経過し、悪化と軽快を繰り返し、下血、粘液血便、腹痛、下痢などが現れ、屡々癌化する。原因は不明。
 いずれにせよ、土曜日の追加の検査はなくなり、朝から食事が当たるとか。所要時間は2時間を軽く超えたと聞かされたが、如何せん記憶がなければどうにもならない。ただ術後、24日に羽田圭佑医師のおかげで命長らえたと、感謝の意を尽して伝えた。

追記7
 朝の6時30分に瀬戸口医師が病室を訪ねてくださった。昨日の内視鏡検査の結果を聞きにである。点滴を取り払い、「よかったね、まずは朝飯、退院に向けての準備に這入りましょう、本当によかった」と、嬉しい言葉をかけてくださる。彼への感謝は言葉にならない。

追記8
 羽田医師に命を救われた、と書いた。同じく、主治医の山崎医師にも感謝しなければならない。往事、21単位の輸血をしたことは何度も書いているが、量にして2940cc、体内の血液の6割に近い。医学的には確実に死んでいたはずだし、山崎医師はわたしの死を予測し、家人にその旨を伝えている。
 あの時、立っておられず足下から崩れ落ちる、崩れるということは括約筋は用をなさず、糞尿は垂れ流しになる、わたしは何という人間だろうかと発奮(脱糞ではない)させようとするのだが、気力が付いてこない、付いてこないではなく、気根や気魄といったもの自体が消え失せてしまっている。
 特に糞尿垂れ流しのインパクトは大きかった。あのとき、生きてあることの含羞(はじらい)をわたしは知った。重い病の人にとっては細やかなことかもしれない、しかし、死と寄り添うのはわたしにとってはじめての経験であり、全身を貫く衝撃だった。病室の隅で、看護師の目を逃れて、何度涙したことか。

追記9
 隣にICUからまたひとり、下腹からパイプが2本出ている、排出用の管である。看護師がこれから生涯使うパイプですから大事にしてください、と説明している。直腸と排泄腔の除去だが、病名はなんだろうか。人のことを気にしてもはじまらないが、大層な病気であるに違いない。
 わたしは喧しいのはまったく気にならないが、一晩中痛みに堪えられなくて呻っている。ただし、酸素吸入器を使用しているので、なにを云っているのか分からない。「喉が渇いた」「腹減った」はなんとか理解できたが、当病院のICUは手術当日を入れて基本3日である。開腹手術の場合、一般病棟へ移って1週間やそこらで食欲なんぞ湧くはずがない。おそらく聞き違いだろう。
 やはり、彼は当分禁飲、禁食だった。逆の立場だったら平気なのだが、いくらなんでもその横で飯は食べられない。部屋の引っ越しを申し出た。彼は今日から車椅子に乗る練習がはじまるようである。頑張っていただきたい(結局、練習は先送りになった)。わたしが寝ていたベッドには、もうひとりの重症患者が這入った。共に酸素ボンベを抱えている。
 さらに、1402号室から1414号室へ、引っ越した先にも禁食の患者がいた。なんともはや。

追記10
 9日。白湯が200グラム、飯が50グラムの粥、当病院では3分粥という。米でなく飯というのが面白い、それが小さな茶碗の底に3センチほど。申し訳なさそうな高野豆腐が3切れと甘藍の味噌汁、嘗物(なめもの)の梅びしお、それになんと本物の牛乳が付いている。21日、計23日つづいた禁食のあとの朝飯である。
 好物の高野豆腐を口に含む、このような贅沢なものを食べて良いのだろうか、としみじみ思う。この日の3食を完食して体重は61.45キログラム、食い過ぎである。梅びしおについては別項を設ける。

 全粥は米と水を重量比で1:5にして炊いたもの、7分粥は1:7、3分粥は1:15の割合である。重湯は米1に水10の割合で煮て汁だけを濾し取ったもの、おまじりは全粥1に重湯9の割合にしたもの。
(註。辞書によって米と水の比率はてんでんばらばら。どう考えても出鱈目と思われる語釈が多かったが、ひとつだけ正確な語釈があったので引用する。なお、古くは蒸したもの飯(いい)に水を入れて炊いたものを粥といった)

追記11
 即刻、セルセプトが500ミリグラムに戻った。すこしでもクレアチニンを落とさなければ。


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2013年03月23日 02:44に投稿された記事のページです。

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