昨夜も松本さんの世話になった。有り金をはたいてモルト・ウィスキーを買ってしまい、実は帰りのガソリン代がなかったのである。戦艦大和の心意気で、最悪の場合は始発電車で帰るつもりだった。
トラックの運転手をしていたため、手持ちのガソリン・カードは宇佐見のみ。安いかわりに、都心部では滅茶不便である。松本さんが五桁のワインを飲まれたので無事に帰宅、もっか泥酔状態にある。
松本さんが飲まれたのがドメーヌ・ニエロ・エ・パンションのコンドリューである。これで在庫はルイ・メテロのムスカデ・キュベ・ワンとジャック・ルムニシェのサン・ペレのみになった。
横須賀さんがですぺらへいらした時、数あるモンラッシェのなかでフォンテーヌ・ガニャールの86、87、89年を蔵していることに愕いていらしたのを思い出す。たしか松本さんはバタールを飲まれたと記憶するが、そのバタールはシャサーニュ共々、各十本ずつ神戸から持ってきた。松本さんが飲まれた一本を除いて、他の在庫はすべて銀座の酒屋と内幸町のホテルに売価のままで引き取られて行った。いささか悔しい気もするのだが、東京のお客さんにワインのプロはひとりもいなかった。銘柄を理解してもヴィンテージまで解する客に恵まれなかったのである。次の店ではワインと日本酒と焼酎は置くのをやめようと思っている。
ここまで書いて寐てしまったようである。昨日、某酒屋で赤坂のですぺらさんでしょうと訊かれた。雑誌で見たとかで、ウィスキー・ワールドの読者層の厚さを知った。次の店の準備をかねて今日もこれから酒屋を覗くつもり。